純正シートは別に悪くはなかった
アバルト124スパイダーに乗ってすぐに思ったこと、それは「視点が高い」だった。
それはベースのロードスターにも言えることで、全高がこれだけ低く、多くの人はダウンサスやなんかで車高まで下げてかなり低いクルマになっているのに視点だけがやたら高いことが気になってしまうクルマってこと。
純正でレカロを採用しているにも関わらず、シートポジションが異様に高いことが気になってしまう。
視座が高いのはいい、でも視点が高いのはNG(なにそれ)。
万人に合わせて作られる市販車で馬鹿みたいにシートポジションが低いクルマは、少なくとも国産スポーツカーのジャンルでも皆無だと思う。シートの調整機構にも限界はあるし、低くしすぎたら小柄な人は運転できなくなるし、逆に高くしすぎたら大柄な人は頭が天井につっかえる。「市販車」という制約の中で「いい塩梅」を見つけるのはメーカーとしても大変だろうし、先代のNC型ロードスターと比べても小型化され、歴代ロードスター随一の狭さともいわれるND型ロードスターをベースにしたアバルト124スパイダーもその違和感のあるシートポジションをベースモデルから継承するほかなかった。
違和感の原因であるシートポジションは、このクルマがオープンカーであることも理由としてあるかもしれない。身長168cmの自分がシートポジションを最低まで落として、オープンにしても視界の1/3くらいにはフロントガラスの縁が入ってくるし、信号もいい感じに見えない。
慣れている人は気にならないかもしれないが、視界の多くをフロントガラス上部の縁、サンバイザーが占めるのは相当に気になって仕方がない。
自分が20年以上、多くのクルマを乗り継いでいの一番ではないにせよ早い段階で手を付けるのはシート交換だったが、こんな一番気になるアバルト124スパイダーでは、納車から4か月以上が経過してやっと着手に至った。
シート交換できなかった単純な理由
北海道にも純正シートで行った
なぜ納車から数か月もシート交換をしなかったのか、過去のブログを読んでいる方だけではないと思うのでざっくりとした理由を書けば「純正シートの保管場所がなかった」からだ。
広い一軒家とかならまだしも3LDKの賃貸マンション住まいなので、外したシートを置く場所の確保がとんでもなく厄介だった。既に、一部屋はカー用品やバイクの純正部品だったりで埋め尽くされていて、そこにさらにアバルトの純正シートを置く余裕は文字通りに1mmもありはしなかった。
ホイールなどは実家の納屋に逃がしていたが、さすがにシートの置き場もなく、物理的な問題の解消ができなかった。
そのため、苦肉の策として純正シートのローダウン加工を名古屋のボレロさんにお願いした。
苦肉の策とは書いたものの、これは大正解だった。
1脚4.5万円で45mmダウンという驚異のダウン量…
純正シートをそのまま45mmというフルバケでもそこまでさがんねーよレベルまで下げることができた。このメリットは計り知れず、目線が下がってドライビングが快適になっただけではなく、純正シートヒーターやヘッドレストスピーカーがそのまま使えるのが素晴らしい。
ただ、不満がまったくなかったわけではなく、やっぱり純正レカロのホールド性はフルバケのそれには敵わないし、宗谷岬から都内まで弾丸した際には腰をやられた。
純正は所詮純正でしかない(´;ω;`)ブワッ
いやいや、稚内市から都内まで弾丸する機会がねーだろとか、サーキット行かなきゃ十分だろって話があるのはごもっとも。でも長距離で楽になるってことは、せいぜい東京-福岡くらいの短距離であればもっと快適!なわけで、それが何か悪いかって言われたらなんも悪いことはないのです…
うん、もうね、歳だからコストをかけて楽したいのよ(へたれ)。
というわけで、純正シートからの交換を決意してもろもろの準備を開始した!
失われるものを失わせないために
スピーカーの移設は必須
ヘッドレストスピーカーがなくなると、ハンズフリー通話の音声が出てこないという切実な問題があるらしく(ロードスターも同じ)、それを解消するためのヘッドレストスピーカー移設キットを購入。
アバルト124がロードスターベースで助かっているのは、こういう小物がいちいち豊富なところで、これがもしアバルト独自で開発されたものだったら、こんなに安くパーツが手に入ることはなかっただろうし、そもそもスピーカー移設キットがあったかどうかすら怪しい。
ロードスターを見ているとロールバーカバーに埋め込んだり、フルバケのハーネスを通す肩のところの穴後ろにつけたり、さまざまあるけれど、一番楽でスタイリッシュなのは運転席後ろの蓋を外して付けるタイプ。
この蓋と交換するだけ
ケーブルは内装の後ろを通す必要はあるものの、そこまで難しい作業ではなかったし、穴あけ加工も不要なのがよかった。
シート後ろにつけるタイプはどうしても見栄えが気に入らなかったし、それを付けた場合はサーキット用のハーネスが通らない。サーキットユーザーでもオーディオが不要というガチ勢よりも普段使いしつつサーキットにも行きたいって人が多数だろうからやはりこの位置がベストな気がする。
スピーカーはBOSE製
たまたま購入したこのキットのスピーカーがBOSE製で、移設したら純正よりもいいやつになった。個人的にはBOSEは好みの音じゃないからどうでもいいんだけど(何
続いてのシートヒーターはモノタロウで純正のヒーターを購入したけど、座面は届いたものの、背中の部分が3月にならないと納品されないらしい…まぁいいか。。。
社外品のシートヒーターもあるんだけど、純正流用が一番スタイリッシュだし、純正スイッチが使えた方がいい。あまりごちゃごちゃとしたつくりをこのアバルトではしたくないと思っているから、コストはかかるけど純正流用を目論んでいる。
寒ければバイク用のヒーターベストとか、そういうものでしのごうと思っている。
保管場所問題は愛と勇気と諭吉で解決
ついに禁断の…手を出した。
シートを交換したいという気持ちはずっと持ちながらも、物理的な問題をクリアできないという切実な状況がある中で状況が大きく動き出したのは、ある日の帰り道のこと。最寄り駅の広告でレンタル倉庫の空きを募集していることを知り、わりかし最近できたみたいで家からもクルマで5分くらいの場所にある倉庫だった。
かねてからコンテナ的な倉庫を借りたいとは思っていたけど、いまいちいい場所に空きがなかったし、二階建ての二階部分とか、極端に狭かったりとか、借りるには微妙なところが多かった中、今回の募集はバイク用のガレージで、バイクだけじゃなく倉庫としてもご利用いただけますタイプだったので、広告を見てすぐにクルマで現地を視察し、その場でWebで検索…最後の1枠だったバイクガレージを契約した。
空の状態なら大型2台は余裕でいける
月額2万円はいかないものの、それなりのお値段はする。大型2台が余裕で入るスペースもあるし、自宅の徒歩数分のところにあるバイクコンテナはこれより小さいのに月額2.3万円なので相場からすればかなり格安だった。
自宅から徒歩圏内ではない(歩くと多分30分くらいかかるw)という欠点はあるものの、そもそもバイクを保管したいわけではなく使わないタイヤとかそういうクルマとバイクの用品を保管する場所なので問題ない。一度預けたら二度と取り出さない物の方が多いかもしれない。
契約から1週間ほどで鍵が引き渡された。積載力のないメガーヌで何往復もして荷物を夜な夜な運び入れる…夜な夜ななのは、夜中は5分で着くけど、日中は大渋滞する道なので15分くらいかかってしまうからだ。
屋内タイプの倉庫であれば1万円前後で借りられたし、12畳だかのタイプも1.3万円くらいであったんだけど、保管するものがタイヤとかバイクの用品ばかりなのでわざわざ屋内である必要もなく、逆に屋内だと運び入れるのが面倒なのでこれがちょうどいい。
片付け途中。最終的にはバイクなんて入る余裕はなくなった
スペースの何割かをタイヤとホイールに占拠された感があるし、上の写真は片付け途中だからスペースに余裕があるように見えるけど最終的には足の踏み場もないくらいキチキチに荷物が入ってしまった。。。
このサイズの倉庫を借りて正解だった(´;ω;`)
シートを交換しよう
安定のASM横浜さん
準備は整った!というわけで、シートを交換しに行こう。
過程はすっ飛んでいるけれど、導入するシートはレカロのRS-G。
信頼と実績のシート
プジョーのときはRMS2700Gを選択したものの、あのシートは自分にはぶかぶかだったし、クッションとか長距離乗ることを考えればRS-G一択になった。むかしはTS-Gとかあったし、そちらのほうが目線は下がるのだけど知らないうちに生産終了になっていた…
RS-Gはそのむかし、ランエボに乗っていたときに中古品を購入して付けていたこともあり、長距離移動ではなんの問題もないことを確認している。
シートは安い買い物にはならないので、あれやこれやと試す余裕は自分にはない。
ロードスター専用みたいなシートもな気にしもあらずだったけど、サイズ的にはいいかもしれないけれど、今回はどちらかといえば長距離移動の疲労軽減とホールド性(細身だからタイトなシートがいい)を重視した結果でRS-Gになった。
ボディカラーに合わせたおとなしい感じのシート
RMS2700Gは背中で支える感じにすると疲れづらいシートだけど、RS-Gは腰回りでしっかり支える感じなので同じレカロのフルバケでも印象はずいぶん違う。サーキットも走るけど、街乗りが大多数って人ならRMSよりもRS-Gのほうがいいと思う。
見た目がスパルタンなRMSは、特にSUVに付けていると「頭おかしいんじゃねーの」って思われるから目立ちたい人にはお勧め(何
お値段23万円なり
新品で買うとレールと工賃やカバーなどを合わせてこんな感じの金額感。RS-Gはバリエーションが豊富なので、レザー+アルカンターラとかだと25万円コースだった気がする。
中古もかなりの数ヤフオクとかメルカリに出ているから、新品にこだわりがなければ中古でもいいと思う。レカロの良さはリセールの良さで、長く使ってもそれなりの金額で売ることができる(状態が良ければ)。
自分が好んでレカロを使うのは、レカロの座り心地のよさに信頼を置いているのもあるけど、リセールというゲスいことを考えたときに他ブランドよりもいい感じになるからってのはあったりなかったり。需要もそれなりにあるしね。
どうもシートはレカロじゃないブランドを使う気にはなれないんだよなぁ…デザインがいいってのもあるんだけど。
RS-Gとアバルト124の組み合わせ
意外とポジションは…
ファーストインプレッションというか、座った直後に感じたことは「目線高っw」だった。RS-Gとレカロ純正レールの組み合わせが悪いというよりかは、ボレロさんで加工した純正シートの45mmダウンというのが異様な低さだったんだなと…
下げ幅は?
サイドアダプタの穴位置はこんな感じ…一番下げてほしいと言ったらこれになった。
一番下まで下げてみた
後日、試しに一番下まで下げてみたが、今度は低すぎて前が見えない。。。そして、スライド量が激減し、身長168cmの自分だと一番前まで出してギリギリブレーキを奥まで踏み切れるかって感じだった。
触媒スペースが干渉する
ロードスターベースで良いところも継承されるが、悪いところも継承される(当然)。
ロードスターは運転席の左足側に触媒スペースのでっぱりがあり、下げすぎるとここに干渉してスライドできなくなる。サイドサポートの穴位置を一番下まで下げると、シートの左前が干渉して前にスライドできなくなっていた。
内張りにずっとこすれた状態なので、シート生地にもよくないだろうね。
なので標準のレールだとこの位置が限界なんだと思う(もちろん身長との兼ね合いで、シートを後ろにできる高身長であればよりダウンは可能)。
目線が若干あがったことと、シートとステアリングの位置関係がずれた。ステアリングに対してシートがドア側によるのは、これはもうメガーヌもプジョー3008も全部そうだったので仕方がないことだとあきらめている。
センターボックスは一応開く
センターのボックスはシート形状やポジションだと全開できない説があったけれど、自分のように前側に出して座る人なら問題ない。
ただ、ショルダー部分が純正レカロよりも出ているので取り出しにくいし、同様に幌のオープンクローズも座ったままできることはできるけどかなり窮屈な体制で行うことになる。
もちろん純正の良さもある
純正レカロは純正なりの良さがあった。腐ってもレカロブランドで出しているシートなので、東京から福岡くらいの往復だったらぎりぎりなんともないくらいの座り心地や、スピーカーにヒーターなどオープンカーに必要なものが盛り込まれたシートだ。
ただ、欲しいものがそれではなく、ホールド性や、よりロングツーリングに対応する腰へのやさしさだとするならフルバケ化はいいかもしれないね…と思ったり。
ちなみに、純正シートもあほみたいに軽いので軽量化目的にするならコスパは最悪ですw