アバルト124スパイダーの数少ない不満点…
できがよろしくないAT
アバルト124スパイダーのAT自体が、確か700台そこそこしかないので不満の声があまりあがらないのかもしれないが、このクルマのATは「いつの時代のものだ」と思うほどにできがよろしくない。
ロードスターRFが出た際に、6ATに試乗したことがあるが、あのATは街乗りでも変速ショックは少なかったように記憶しているし、特に何かを思うようなところはなかった。
単純に6万kmを超えているので機能的な劣化とも思い、ATFの交換などもしてみたが劇的にフィールが改善することはなかった。
そもそも、NDロードスターとアバルト124スパイダーは同じATなのか?MT車は1世代前のNCロードスターのものを使っているそうだが、ともすればAT車もトルク容量的にNCロードスターと同じものを使っているんじゃなかろうか(ATに関してはあまり触れている記事がないので、詳細はわからない)。
具体的にどんなところが気に入らないか?
- 変速スピードが遅い(特にUP側)
- 変速ショックがでかい
- アクセルを踏んでもダイレクト感に欠ける(MTでいうクラッチ滑りに近い)
- ECUチューンしたら余計に滑り感が強くなった
ATだから仕方ないだろ、嫌ならMT乗れって話なのはごもっとも(´;ω;`)
それでもプジョー3008に積まれていたアイシンの8ATよりはスポーツ寄りで、遊べるATではあるし、峠道でガンガン変速してもセーフティ入って変速できなくなることもないので優秀寄りではあるものの、クルマの性格を考えると今ひとつ感が強く、それをどうにかできないか?と悩んでいた。
TMC AutoFlash購入
MTであればクラッチ交換など、できることはあれど、ロードスター自体がそもそもMTで乗るようなクルマなので強化ATのようなものも調べた限りでは存在しない。嫌ならほんと最初からMT買えよってことだ。
ただ、調べているとプログラムをいじって改善できるようなパーツがあり、日本でも代理店が取り扱いを行っていたものもあった。
いくつかのショップで取り扱いがあるAutoFlash(名前がいろいろあるようだ)だったが、自分が調べていたときには日本のどこの代理店も取り扱いをやめているのか、売り切れ表示のままだった。
もともとは海外製品なので、代理店を通さずに買えば安いしなと思ってサイトを探すも、怪しげなところが多く、TMC Motorsportってとこでやっと購入できた。
全世界送料無料(関税はかかる)で、£299.99GBP、当時のレートで日本円換算57,500円ほどだった。
イギリスから3日ほどで届いた、早い。
お馴染みDHLで配送されるが、日本側では佐川が引き受けているようで、また荷物を受け取る前にWebから関税4,100円を支払う必要があった。
AutoFlash インストール
届いた商品のパッケージングは非常に簡素…これ、いろいろ調べていても人によるみたいで、説明書があったり、QRコードだったりするようだが、自分の場合はこの商品しか入っておらず、QRコード的なものも何もなかった(´;ω;`)
みん〇ラでインストール方法を書いている人がいたので、それと同じでいけるだろうと思ったからよかったものの、そうでなければこんなの「OBDに刺すんだな」くらいしかわからないから、購入店に問い合わせ(英語)になるところだった。。。
そういう意味では先人たちに感謝しかないね…日本の代理店なら高い分、マニュアルとかもしっかり付いているんだろうけど、そのあたりはまぁ個人輸入の致し方がない。。
手順としては…まず、5分くらいアイドリングさせる必要があるので、それなりの場所に移動してから…
①メインキーON(エンジンはかけない、メーターなどが動作チェックするあの状態)、エアコンや音楽(Bluetooth)などはOFF。
②OBD2ポートにAutoFlashを刺す
③124スパイダーのOBDだとAutoFlashのランプが見えづらいが、手をかざしてランプの点灯状態を確認、ビープ音が何回か聞こえて、ランプが消えたら取り外す。
④エンジンをかけ5分間アイドリング(アクセルは踏まない、動かさない)
⑤以降、100km程度、スポーツモードやマニュアルモードに切り替えて試走
簡単だけど、5分間アイドリングさせる必要があるので、それなりに広い場所や時間帯を選ばないとレコモン搭載車は近所迷惑になるw
試走でわかる明らかな変化
正直なところ、トランスミッションコントロールユニットの書き換え?で大きな変化が出るとは思えなかったが、5分のアイドリングをさせたあとにクルマを走らせるとすぐに変化がわかった。
めちゃくちゃレスポンスがいい、パワーが出てる!
自分の124スパイダーは、オレカさんでECUチューニングをしたタイミングでスロットルコントローラーを撤去した。これはECUセッティングでレスポンスをよくしているため、干渉してあまりいい動きにならなかったからだそうで、実際スロコンがなくても十分にレスポンスがよかった。
それであるのにAutoFlashをインストールして、Dレンジに入れてアクセルを踏んだだけで思った以上にクルマが前に進むのでびっくりだ。
100km走る間に学習し、最適化が行われるようだが、10kmも走っていないのに、既に変速がかなりスムーズであることが体感できる。
MTモードで変速した際、いままで鈍足に感じたUP側へのギアチェンジも、体感で以前の半分くらいの素早さで行われるようになった。
大げさな言い方かもしれないが、20年前の4速ATが、現代のスポーツカーに積まれるATになったくらいの変化を感じた。
AutoFlashを入れたことによる変化
ATを慣らしついでに、オレカさんでオイル交換とパーツの装着。
カーボンロールバーカバー?を装着。
100kmの慣らし走行を終えてとにかく全体的なスムーズさが際立っているが、それだけじゃない。
シフトショックの低減
これはもう動き出してすぐにわかり、全域で今までよりも滑らかな変速が行われるようになった。
ATなのでMTよりスムーズだろと思うかもしれないが、たまにへたくそなMTシフトのようにガクンとなる変速だったのが、角が取れてスムーズに6速までつながる。
先にも書いたように20年前のATが、現代のATになったような、それくらいに変わる。
変速スピードのUP
シフトダウンのスピードには不満はないが、シフトアップの遅さだけが気になっていた。
AutoFlashをインストールしたことで、シフトアップのスピードもかなり速くなった。
DCTとは言わないが、最新のスポーツカーに搭載されるAT並には早くなったし、今は特に不満がない。
メガーヌでMTシフトするよりは全然早くチェンジできる。
ダイレクト感の向上
NDロードスターとどこまで同じ仕組みを使っているかはわからないが、ダイレクト感にかける124スパイダーのAT。正直、変速スピードは変わるもののダイレクト感については構造上の話が大きいと思っているのでそこまで変化はないと思っていた。
それが、かなり変わる。
アクセル踏み始めの1,2速はロックアップしないのでまだ間に流体がはさまっている感じは残るものの3速以降は明らかにアクセルに対してのツキがよく、今まであった違和感は薄れた。
これがまた気持ちがいいし、運転していて楽しい。
低回転時のトルクアップ
トランスミッションコントロールをいじると同時にトルクリミッターを解除してくれるそうで、これは明らかにパワーアップしているので体感できる。
ATをもともと保護する目的でかけられているトルクリミッター、ECUチューンしただけではエンジン側のスペックは向上しているが、AT側では相変わらずセーブした状態なので多分これまでは本領発揮とは言っていなかった。
特にゼロスタート時にはトラクションコントロール的にクルマ側が「抑えているぞ」という感覚があったが、そういうものもだいぶ薄れて、勢いよくアクセルを踏めばリアタイヤが空転するくらいの力強さは出ている。
全体的な質感の向上とドライバビリティの向上
今回やったことはプログラムの書き換えで、機構的には何の改良も加えていない。それにも関わらずここまで体感できる劇的ともいえる変化があったのは驚きだ。
そもそもロードスターのATでは、アバルト124スパイダーほどの違和感はなかったので、構造的というよりはフィアットのエンジンを載せるにあたり、プログラムでこういう躾をしたということなのだろう。
だから、本来はロードスターと同じだけのスムーズな走りができる。
インストール後の感想はまさに動的質感の向上、それに伴うドライバビリティの向上だった。
MTならクラッチ操作をスムーズに行えば、ほぼ変速ショックを感じさせないドライブも可能だが、ATの場合はそうはいかない。また、ドライバーの意思とずれる変速も気持ち悪さが残り、流しているときならともかく、攻めた走りをしたときはイマイチだ。
そういうものが今回なくなったので、普通に流していても気持ちがよく、攻めたときはより一体感のある動きになり、ベースとなるロードスターが持つ運転の楽しさが更に引き立った。
ただ、ネガがまったくないとも言い切れない。
特にトルクリミッターの解除は、「あえて」メーカーが抑えているトルクを出せるようにしたということで、ATへの負担はどうしたって今まで以上にあるはずだ。ましてや、ロードスターとは違いターボ化されたアバルト124スパイダーのトルクは、低回転からロードスターを遥かに凌ぐ。(2リッターのロードスターRFでも200Nm、124は250Nmだ)
馬力で駆動系が壊れることはあまりないように思うけれど、トルクは駆動系を一瞬で破壊する。ランエボのとき、馬力を抑えてトルクを目一杯上げたら、3速だか4速のギアが粉々に砕け散ったことがある…そういうリスクも考えられるということだ。
こうしたリスクは考えられるものの、ATで行くと決めているのであれば、このAutoFlashの導入は、ECUチューンよりも手軽でローコストで、変化が現れるのでATユーザーにはおすすめできるものだった。