最近、水害や地震などで多くの地域が被災したりしている。
その関係もあって、会社のあるビルの各テナント総務担当が集まり防災訓練を受けてきました。
以前アウトランダーPHEVをレンタルしたとき、こんな車があれば有事の際にも安心だろうなと思いました。
現代文明において電気が使えないというのは色々と詰みだからね。電気を使わずに使えるものがいざというときに少ないと気づくのは目に見えています。身の回りで日常的に何気なしに使っているそれの多くは電気で動くはずですからね。
アウトランダーPHEVは魅力的だけれど、よりサバイバルに強い車が日本にはある。
それがこの車。
ジムニー!!
納期が1年とか言われているような滅茶苦茶人気のある軽自動車。
今回たまたまレンタカーで借りられることがわかり、仕事で愛知まで日帰りすることもあったので往復で1000kmくらいは走るからネタとしてはいいかなと思って借りてみた。試乗じゃわからないロングドライブを、ジムニーに乗ったこともない(正確には先代を大学生の頃に一度だけレンタルしたことはある)やつが乗ってみるという話。
間違いなく本来のジムニーの使い方とは違う、オフロード要素いっさいなし。
国道1号日本橋を起点に静岡市手前までを一般道で、そこから先は新東名と知多道路を経由してセントレア空港まで行く道程をジムニーとともに走ってみる。
最廉価版ジムニーに感じるよさとは
今回の車は1番安いXGの5MT。
いまどき珍しいスーパー割り切り仕様。
マニュアルエアコンだし・・・。
ウレタンステアリングだし・・・。
電動格納レスどころか調整すら手動・・・。
ハロゲンライトだったり。
ここ数年でいちばん装備がしょぼいクルマだった。
パワーウィンドウがついていることに違和感を覚えるレベルでね。
ただ荷物が載ればいいんだろ的わりきりを感じるリアシート。
上のグレードだと段差がなくなるらしい。
確かに上位グレードだといろいろと装備がついて快適になる。
ただジムニーを使い倒す層にとってそんな装備が必要か?と問われればNOな気も。
エアコンだってマニュアルでも使えればいい。そもそも軽自動車でマニュアルでACをONにすると途端にパワーが落ちるのを自分は嫌うので今回は窓全開の送風のみで走っていた。軽自動車は狭いので窓を開けて腕を伸ばすだけで案外風が当たって気持ちいい。
装備は貧相な最廉価グレードだけど、そこに不満が特にないし、むしろ楽しい。
なぜならこれがジムニーだから!
ジムニーが走る道を考えるとそもそもエアコンをONにして林道を走るのか?パワーもトルクも食われるぞ?ミラーに電動格納つけるのか?横転して破壊するしぶつけるもんだろ?修理費やすい方がよくないか?ヘッドライトにLED?ぶつける車にそんな高価なものを入れたら大変なことになるぞ、ハロゲンの方が安いし雪道では安心だ。
そんな割り切りを感じられるのがいい。ゲレンデバーゲンでもなんでもない。こいつは山岳地帯や豪雪地帯の生活の足であり、生き残るために必要なクルマなのだ。エアコンよりも4WDのセレクタレバーがあるほうが重要なのだ。
段差があるラゲッジも無造作に荷物を積むのであまり関係ない。
装備が充実していることは必ずしもプラスではなく、ジムニーのようなクルマではむしろ装備が簡素であるグレードがあることのほうが重要に思う。
ジムニー激走1000km
ジムニーをレンタルしたもののMT自体が3年ぶりくらい。
フロアからにょきっと生える剛性感もなにもないぐにょぐにょしたシフトレバーに不安を覚えないと言えばうそになる。
クラッチも軽自動車あるあるのどこで繋がるかまったくわからないものだ。
ただ実用車としての雰囲気はあるので嫌いにはなれない。
ストロークも長いしぐにょぐにょするけれど入ってしまえばかっちりした感じはある。
なんだろう・・・すごくワクワクするぞこのクルマ。
何度かギアチェンジを繰り返すうちにそれが楽しくなってくる。
限られたパワーをマニュアルで引きだすことは面白い。ランエボのようにどこからでも瞬発的に加速するトルクもパワーもジムニーにはない。
加速の悪さもネットでは評判だ。
でもこの表を見れば仕方ないと思うだろう。
まずギア比が凄いんだ。ローが5.8でファイナルが3.8なんでクランクシャフトの23回転に対してタイヤがやっと1回転する計算になるかな。1速が速攻でふけきるような超ローな設定はまさにジムニーが本格オフローダーである証拠、これも厳しい環境を生き延びるために必要なものだね。
それに5速が直結なのも面白い。
500Xの9ATもレネゲードとの絡みもあるのかローは4.7と高い。
ファイナルと掛け合わせるとほぼほぼジムニーと同じくらいになるが、500Xの9ATであればローを常用せず実質2速発進の8ATみたいなものだから実用性や燃費の面でも優位だけれどジムニーは5MTだ。
2速が普通のクルマの1速に該当するので1→2→3速までは速攻であげていかなきゃいけない。実質4速マニュアルみたいなセッティングになっている。
トルクを有効に使うための設定なので加速や最高速が厳しいのも仕方ない。
そんなものはジムニーには必要ない。
最高速度はメータ読み135km/hなので軽自動車のリミッター手前くらいまで使える。そのときの回転数もレブリミットまで余裕を残しているが、これはジムニーシエラが普通車でミッションが共通だからではないかと思われる。
そんなギア比なので5速3000回転ではだと80kくらいしか出ていない。100k巡航すると空いている街なかを巡航するより燃費が落ちやすくなるのもこのクルマの面白いところ、速度は出せるけれど車格とギア比を考えると第一走行車線を80km/hくらいで流すのがいいだろうね。
けれども高速道路が苦手ってわけでもない、そこは今風の軽自動車だ。
エンジンはR06Aターボなので64馬力出てるのでパワー的に不満はないよ。
そもそも高速をぶっ飛ばすクルマじゃないし。
加速が辛いのはギア比もあるけど車重のせいもある。
64馬力のクルマで車検証重量は1000kgを超えている、はっきり言って重い。
そもそも軽くつくるべきクルマではない。ジムニーが使われる用途を考えれば燃費を求めた軽量モデルよりも横転してもなにしても自走で帰ってこれる強靭な車体が必要だ。ラダーフレームなこともあり絶対的な重量が重くなるのは仕方ないし、誰も軽量でエコで高燃費なジムニーなんか望んでもいないだろう。そういう車はハスラーあたりに任せたらいい。
遮音性も低い、普通ならマイナスポイントだがジムニーはそれすらも雰囲気として許容されむしろそこがよいと思ってしまう。
トランスファだったりエンジンだったり、あらゆるメカニカルなノイズが車内に飛び込んできて漢の車であることをアピールしてくれる。
スポーツカーとも違う、漢のギア。
操作系の適度な重さもいい。
MTのギアの入り方はアルトワークスとは違う意味での感動がある。
「よし、これからオフロードに飛び込むぞ」
そんな覚悟をさせてくれるような入り方をするんだよねジムニーは。
覚悟という意味ではトランスファの切り替えもレバー式になった。
重いレバーを後ろに下げれば、
レバーの感触とインジゲータがAWDになったことを教えてくれる。
先代はボタンスイッチ式だった。
確実にAWDに切り替えたと分かるのはレバーだ。後輪駆動のジムニーはこれでタフネスな直結AWDとなる。今どきパートタイムのAWDを採用しているのはジムニーくらいなものだろう。燃費と走行安定性を考えればオンデマンドやフルタイムAWDに行きついてしまう。ジムニーはあくまでドライバーの責任でAWDを選択させる・・・そこも漢のギアらしさだ。
AWDにすればそれなりの走破性を発揮するだろうけど2WDならオンロードの走行性能も悪くないことに驚いてしまう。新型になってだいぶそのあたりは改善されたらしい。
1000km近いドライブをしてもドライバーは疲れない。
よくできたサスペンションの影響も大きいんじゃないか?
よくできたといっても3リンクのリジットなんだけどね。
今どきレアな足回りなので乗ったことがある人の方が少ないよなぁこれ。
適度な硬さとロールを持っていて思っているよりずっと安心感がある足回り。
箱根の峠道をそこそこのペースで飛ばしても安心感がある。
高速道路も問題ない。
普段は後輪駆動ってのもあるんだろうけど割と素直なハンドリングで面白い。
タイヤなんて低扁平とは真逆路線を進む漢の80扁平、これも乗り心地に寄与しているのだろうね。
ゆったりと動きながら、峠道での楽しさもある、不思議な車。
ステアリングダンパーも搭載されたみたいなのでそういうところがハンドリングの向上になっているのかもしれない。
960kmを走っての燃費はおよそ17km/L。
カタログ燃費が16km/Lなので燃費詐欺のスズキらしいクルマだ。
なんだったら実家のスペーシアよりも燃費がよかったw
ジムニーはひとり、スペーシアは大人二人子供二人で荷物ありの条件だったけれどジムニーのもともとの重さを考えればどっちもどっちだ。トランスミッションもCVTとMTなのでMTのほうがよさそうだが、先にも書いた通りジムニーのMTはそこまで高速走行を得意としない。どう考えても高速メインで動いたスペーシアのほうがよくなると思ったが不思議なものだ。
自分がジムニーに点数を付けるなら100点しかない。
車体から感じるイメージより全然疲れないというだけでも満点を与えたいレベル。
正直いえば不眠不休のしごと明けに自走で1000km走るという基地外なことをやればどんな車でも死ねる。
身体の負担だって半端ないし、それが慣れない車だったら余計に辛い。
普段から乗っている500Xよりもすぐに肌に馴染み、疲労感を与えず一日を終えられた、これが事実。
これは試乗じゃ絶対にわからないジムニーの隠れたポイントだと思う。
一日が終わるとき、すごく残念な気持ちになった。もっと走りたかった。
出張だから仕方ないとはいえ、仕事を放棄して一日中走り回っていたいと思わせてくれたし、存分に疲れたはずなのに帰宅後も寝ずに走りたいと思えるのがジムニーの魅力だと思う。
学生の頃とか若い頃に戻ったかのように、ワクワクする気持ちが蘇る。
知らない場所に飛び込みたいし、飛び込める車体がある。
ジムニーにはライバルがいない。
こんな本格オフローダーが納期1年とは信じられない。話題性で買う人もいるのだろうけど、生半可な気持ちで乗る車ではないのは確か。
関東圏で雪が降る場所にも行かないような人はジムニーである必要はまったくないしハスラーのほうが絶対にいい。
このギアは生半可な気持ちで乗れてしまうけれど、そういう人は長くは愛せないのだ。
よくできた道具は使い方を選ぶ。
それでも国産でなにかを選べと言われたら自分は間違いなくジムニーを選ぶ。
それくらいにハマってしまった。
ないないづくしが最高
自動ブレーキもレーンキープもなにもない。だから廉価版ジムニーを買ってしまうと多くの人は安全面だったりで不満を抱えるはずだ。
だけどジムニーにはそもそもそんなものはつけてはいけない。
こいつが走る場所はレーンをキープする必要もない荒地だし、そもそもキープされたら困るのだ。自動ブレーキにしても障害物だらけのところを走るのに勝手に停められちゃ困る。すべてをドライバーの責任として操れる人が乗るクルマ。
不思議なことに人車一体感も強い。
よくできた道具が人間に馴染むようにこいつなら何でもできてしまうという気になれるし実際ドライバーがやりたいことを叶えてくれるだろう。
そんなタフギアなくせにポップな見た目もなかなかいい。
フィアット500と並べても引けを取らない愛くるしさだ。
旧型ジムニーを彷彿させるインテリアだって最高だ。
レトロとモダンをうまくバランスさせたデザインは逆に目新しさがある。
ナビだって一等地に付くから見やすくていい。
ジムニーの欠点とは?
ドリンクホルダの位置が絶望的に悪いとか不満はいくらかあるけれどそれすらジムニーでは許されてしまう。そもそもドリンクを飲みながらオフロード走るなよって言われたらそれまでだしh、ある意味ちょっと前までのフランス車に通じる運転中は運転に手中しやがれ的メッセージにも思う。
装備の貧相ぶりに関しても先に述べたようにそもそもジムニーには必要ない。
インテリアやエクステリアの高級感も不要だ。
そういうものを求める人はそもそもジムニーを買わない。
唯一気になったのはリアハッチだ。
開閉が途中で止まらないので全力で開ききってしまう。
気をつけないとぶつけてしまう。
上級グレードだとストッパーがついたりするんだろうか??
それくらいなもので普通のクルマでは不満に感じることもジムニーでは味になってしまう。もともとジムニーに対する評価がそこまで高くなかった(乗用車として)ので1000km走ったあとに感じたことは疲れないし、楽しいし、最高の車ってことだ。
こんな楽しいと感じた車はここ最近じゃなかった。
もちろんメガーヌRSは楽しい車だった。
輸入車だったら間違いなくぼくの中ではメガーヌRSが優勝。
けれど国産車でほしいと思えるものが本当になかっただけにジムニーは衝撃だった。
こんなにもいい車ならいつかは欲しい。
もともとが安い車だし、軽自動車なので中古流通だって数年待てば豊富になり、価格だってたかが知れてるものになるはず。
数十万円で買って遊び潰す、ギアってそういう使い方をしたいものだなぁと思った。
一家に一台、ジムニー。