ぴよこ☆くらふと☆わ〜くす

イタイタしい生活を送ってます。

Mitoは大人のためのデートカー!

500Xが無事死亡したことで我が家にやってきたレンタカーのMito

こちらは家政婦のミタ。

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松嶋菜々子は可愛い、異論は認めない

そんな反町隆史氏の妻のことはさておいて、突然我が家にやってきたコアラみたいな顔をした彼女。

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ミラノでデザインして、トリノで製造したからその両地の頭文字をとりMi.toらしい。イタリア版はMiとtoの間にドットが入ると我らがWikiには書いてあった。

ともすれば富山県でデザインして、富山県で生産するような場合、そう光岡自動車は「」というクルマを出してもぜんぜんおかしくない。ミトトミ、いいね。

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日本車も漢字を車名にしたらいいと思う。昔から富山県にある石動という地名が好きなのだけど、ホンダ・石動TypeRなんてあったら宗教上の理由でホンダを買えないぼくでも改宗してしまうかもしれない。

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さてそんなイタリアの至宝アルファロメオ

滅多に運転する機会もないし、三連休の遠出予定がすべて台無しになり病院と深川警察までのドライブだけで終わるのは癪なので、一体このMitoというクルマがどういうクルマであるのかをぼくなりに検証してみようと思ったのがつい先日のこと。

ランエボや500Xなどなんだかまったく乗り継いできたクルマにこだわりもない三十代の妻にも見放されたクズ野郎の適当な評価なので読むも自由、読み飛ばすも自由です。

予め書いておくとぼくはそれほどアルファロメオというブランドに詳しいわけじゃない。まったくの無知でもないけれど、正直言えばアルファロメオよりもフィアットのほうが”まだ”好きだというくらいで、実際買うとなればまったく興味も示さなかったブランド。

ぼくの中ではアルファロメオ=森博嗣S&Mシリーズなのです。

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ヒロイン西之園萌絵は絶対にアルファロメオに乗っている。

作中でアルファの名前が出たことはなかった気がするが、エンジン音にこだわりがあるのであればそのクルマは絶対にアルファロメオだという確信がなぜかあった。多くのこの作品を読んだクルマ好きは彼女の愛車がアルファロメオであったと疑わなかったと思う。

そんな読者の想像が叶えられたのはつい一昨年のことだ。

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ドラマに次いでアニメ版として登場した森博嗣の代表作「すべてがFになる」。ここでヒロイン西之園萌絵はアルファロメオ4Cに乗るシーンが出てきたのだ。

なんでかわからないが、自分の中では快音放つエンジンを持つブランドはアルファロメオと刷り込まれているし、もしかすると人類はその長い歴史の中で無意識にアルファロメオは優れたエンジンを生み出すメーカでありブランドであると刷り込まれたのかもしれない。

ドグラ・マグラ

ドグラ・マグラ

 

そうまさにドグラ・マグラの世界だ。

何よりもアルファロメオというブランド名の響きが美しい。フェラーリ、ランボルギーニなどは最早聞いただけで高級車ブランドであることは分かる。けれどアルファロメオはその名前の舌を巻くような言い回しがエロく、なんだかよくわからないけどきっとそれはすごくいいブランドなんだ!と思わせてくれる不思議な力がある。

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そこまで書いておきながらぼくはアルファロメオにぜんぜん興味がなかった。

それは単純に自分が求めるクルマがそのラインナップになく、興味が無いものにはまったく興味をもてないB型人間なので今までそのアルファロメオに食指が動かなかったのも事実。

昨年、ランエボから乗り換えを決意したときにぼくが求めたものはSUVだった。

現行の国内ラインナップにアルファロメオはSUVを出していない。

jp.autoblog.com

そもそもSUV自体がなかったらしい。

このステルヴィオは物凄く美しいし、乗りたいものだけど絶対にぼくが買える金額ではないし、そもそも将来出るクルマを1年前に検討できたかといえばそれは無理な話だ。ランエボを延命させるならエアトレックターボでも買ったほうがよい。

そんな状況だったのでフィアット・アルファロメオというディーラーに足を運び、同じ店内にアルファがあってもそれは「ふーん」で終わってしまう程度だった。

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実際に我が家に来たのはMitoとエンジンを同じくする500Xだった。

www.fiat-auto.co.jp

500Xが不幸な事故で修理中とはいえ、我が家には一時的にMitoがある。

この両車で共通しているのは1.4Lマルチエアターボであるところだ。

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その昔のMitoはDOHCだったらしいけど、いつぞやのMCで1.4Lのマルチエアだけになったみたい。共通とはいいつつも実用車のそれである500Xではエンジンの圧縮比がMitoの9.8よりコンマ2高い10に設定されているが、まぁそこまで大きくは変わらない。

むしろカタログ値135馬力のMitoに対して500Xはクロスプラスで170馬力とハイブースト版になっているので馬力だけで言えばクロスオーバーSUVである500Xの方が高出力な不思議。MitoQVになると似たようなカタログ値になる。

トランスミッションは乾式クラッチのアルファTCTを採用。

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いわゆるデュアルクラッチATで、500XもFWDモデルはデュアルクラッチATだし、パワーも140馬力くらいなので車重を無視すればキャラ的には似ているところはある。

TCTはクリープがほぼないのでトルコンATから乗り換えるとそこに違和感はある。変速スピードもVWのDSGに比べると若干まったり感があるし、低速でたまにギクシャクすることもあるけれどチンクに搭載されるようなSMTと比べれば格段に普通のATとして使えることは違いない。

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Mitoは6速TCT。

6速60km/hでタコメータは1500rpmほどなので街乗りでは十分なギア数で積極的にエンジンブレーキを使えて減速できるのでブレーキに頼らないドライビングになるのはMT的。いろいろ未熟と感じる部分もあるけれどあの9HPと呼ばれるZFの9速に比べればぜんぜんこちらのほうがいいし、むしろ500Xクロスプラスにも搭載してほしい。

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踏まなければ燃費だってそんなに悪くない。

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高燃費の秘密はアイドリングストップが搭載されているからだと思う。多分500Xと同等のバッテリーが積まれている。イタ車のアイドリングストップはエンストと同じという時代でもないだろうし、まぁ500Xも極稀に復帰しないことはあれど、そこまで過度な心配は不要かと。不安になればボタン1つでOFFにできる。燃費は体感1割くらいは悪化するけれどこのクルマで燃費を気にする人は多分いない。

よかったら嬉しいねっていうグリコのおまけ程度なものだろうと。

アイドリングストップからの再始動はクランクも500Xより長いし、クリープが弱いTCT故にスタートがもたつくこともあるけれどこれは慣れかな。

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スタイリングは美しい、この一言に尽きる。

国産でもこの車格のクルマはあるけれど、この美しさを出せるのはさすがはアルファロメオといったところで、このデザインだけでも買いなんだと思う。

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ドアハンドルがあるのが素敵だ。

というより3ドアでドアが長いのでドアハンドルがないと単純に重くて締めづらいから存在する必然性の高いものだと思う。

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事故の影響で左肩があがらないぼくに3ドアのシートベルトの遠さは拷問に等しい。身体を曲げる度に「うっ」と声が漏れてお世辞にもスマートではない。

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とはいえアームレストに左手を乗せるとぼくのシートポジションでは自然にステアリングを握れるので左腕をそこまで動かさなくてよいので走り出せば楽だ。最早、歩くことすら辛い今の自分はMitoの中であれば健常者として過ごすことができる。どこかで見た光景だと思ったら鉄血のオルフェンズだった。

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バルバトスに乗れば最強、降りたらただの障害者の三日月先輩と同様だ。まぁあそこまでは酷くないけれど、運転していると普通なのに降りると腰が痛くて左足を引きずる無様な姿を晒している。 

この手のクルマは今の家庭事情を踏まえると購入するのは正直厳しい。

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チャイルドシートは載るには載る。

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だけれども子供を乗せるのが辛い。手負いの状態で不自然な体勢で後部座席にアクセスするのは明らかに身体にダメージが大きい。もし手負いじゃなくてもこれを頻繁に繰り返すのは正直しんどい。だからMitoは子持ちにしても子供が小学生くらいにならないとファーストカーとして使うには難儀だと思う。

ラゲッジスペースも極めて少ない。しかも深いので重い荷物を載せるのはなかなか厳しいように思う。

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手負いのぼくがここに重い荷物を載せられるかといえば微妙だ。

なにしろ会社にとどいたiMacを片手で持てなかったのだから。

ぼくの感想は正直、間違った感想だ。

本来は500Xが適正な我が家に、グランデプントベースのコンパクトカーが来たのだから使いづらいのは当然。なのに子持ち&けが人の目線で評価するのはやっぱり違う。

今のぼくが評価するのはそういう父親目線ではなく、Mitoは一体どういうクルマで、どういうことに使えばよいのか?もっと具体的にいうならデートカーとして成立するのかどうか?というところ。

 

事故から一夜明けた1月8日は午後から雨になった。

 

銀座に買い物に来ている友達を迎えに行くために、ぼくは痛み始めた身体をMitoの運転席にやれやれと座らせ、阿頼耶識システムもなにもないアナログなMitoの鍵穴にバタフライな鍵を差し込んでセルを回す。

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プッシュ式のキーレスエントリーが全盛期の今において、鍵穴に挿してセルを回すという行為は如何にも前時代的ではあるし、この行為に「安っぽい」と思ってしまった自分がいたことは事実だ。

けれどなんどかその行為を繰り返すうちに、この前時代的な儀式が実にエロいと思えた。

つい先週、社用携帯が新しくなるというのでガラケーを十数台キッティングして社員に配った。その中の何人かが「久々に使うガラケーはなんかドキドキする」とコメントしていたのだけど、そういう気持ちに多分似ている。

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ついの8ヶ月前まで、キーレスなんてないランエボに乗っていた自分は当然のように毎日この始動儀式をしていたはずなのに、人間というのは適当なもので8ヶ月1.7万kmも最新のクルマに乗ってしまうとこの始動儀式にちょっと戸惑いドキドキするのだ。このドキドキは言い換えれば恋に近い。

午後から雨になり、視界は最悪、路面温度も低い状態となった。

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MitoのヘッドライトはLEDヘッドランプすら当たり前の時代にこれまた前時代的なハロゲンヘッドライトだ。

そう、HIDですらない。

しかも標準バルブは物凄く暗くて、ぜんぜん前が見えない。事故の後遺症なのか左目の視力が若干落ちている今のぼくに夜間の運転は少々危険な香りがした。

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Mitoは決して安いクルマではない。

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イタリア車、しかもアルファロメオというブランドを考えればバーゲンプライスという見方ができるかもしれないけれど、それでも定価330万円で売ろうという車の標準装備として考えると明らかに不足しているものがある。それは多分、500Xと似た価格帯なのに500Xがイタリア車とは思えないほどに最新鋭の装備を備えた近代的な車に仕上がっているという、Mitoを卑下するのではなく500Xがグローバルに通用する装備になっているという考え方になるのだけど、そんな車に慣れた自分だから余計にそう思ってしまう。

懐かしい黄色い光線は雨に濡れた白線を映し出すには役不足だけど、思えばそんなクルマばかり昔は乗っていたではないか。バイキセノンのヘッドライトが付いているクルマに乗ったのは免許を取ってから数年後の話で、自分が乗っていたアルトワークスなんかそれこそライトがあるんだかないんだかわからない程度だった。それもくらべればライトがあると分かる程度の明るさがあるMitoは優れているといえる。Autoじゃないのにエンジンオフで自動で消えるので翌朝ライトをつけっぱなしで走ってしまったのはご愛嬌だ。さすがにオートライトは欲しい

けれどよくよく考えればライトを点灯させるという行為もまたエロい

助手席から見える、左指を動かしライトをオン・オフするその仕草はアナログな動作だしオートライトのこのご時世ではまず見ることが少なくなった動作だ。ワイパーすら今はオートなのだから指を動かす動作を助手席の彼女に見せることなんて本当に少なくなった。だから艶かしく指を動かしライトをオン・オフすることはこの時代だからこそ「なにそれかっこいい」になる可能性がある、そんな動作なのだ。ぜひとも運転される男性はスムーズにライトのオン・オフを試みて欲しい。

雨の高速道路は普段AWDに乗っているぼくからすればスリリングだ。

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気温2℃、路面温度も低い状態でぼくはFWDを過信しない。それでもMitoは実に安定感ある走りをしてくれてさすがは欧州車だと感じた。

高速道路を走りながら、Mitoというクルマを理解しようとした。

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Mitoが我が家に来て3人の女性を助手席に乗せ、FBにMitoの写真をUPした。多くコメントをしてくれたのは女性陣で、コメントを受ける限り、すごく妙齢の女性に受けはいいが、逆に若い女性にはさっぱり理解されない。

「500Xのほうが好き」派といやいや「Mitoが好き」派の二極に別れたが、年齢別で見ると20代前半女性は500Xで、30代後半はMitoと綺麗に二極化したことが面白い。

アルファロメオというエロい響きと、インテリアの質感はMitoの場合伴っていないと感じられる。

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加飾を持たないエアコンに、ヴァーチャルボーイのような液晶。

バーチャルボーイ (本体) 【バーチャルボーイ】

バーチャルボーイ (本体) 【バーチャルボーイ】

 

 

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Mitoの登場は2008年なのだから古臭くて当然といえば当然なのだけど全体的に懐かしい香りがする。けれど妙齢の女性はやけにこのMitoを評価する。いまいちMitoがすきになれないのは自分がまだ若いということなのだろうか?

正直、運転していてもいまいち気持ちが盛り上がらない。

500Xを壊された直後ということもあるのだろうけど、アルファロメオという高貴なブランドのクルマを操れるというのに自分はどうも上の空。

このMitoというクルマを理解できずもやもやとした気持ちを抱えながら走っていた。

そう…あの歌が流れるまでは。

最近、AmazonMusicにハマっている。

Amazon Music

Amazon Music

 

ドライブデートの機会はフル既婚者状態のときに比べれば格段に増え、同時に自分のiPhoneに入っている音楽は常々変わる助手席に対応できるほど豊富なバリエーションを持たなくなった。言ってしまえば軍歌・演歌・アニソンで占められるプレイリストを好んでくれる女性は世の中にそう多くないという事実を痛感することになったのだけど、新たにプレイリストを作り直すのも面倒だ。それならばAmazonに頼ってしまおうというのが生活のほとんどをAmazonとヨドバシに依存する、いかにもぼくらしい発想だ。

そろそろ銀座に到着する、その際になりAmazonMusicアプリを起動して適当な歌謡曲を流し始める。そのとき車内に聞き覚えのあるイントロが流れた。

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松崎しげる「愛のメモリー」、名曲である。

愛のメモリー

愛のメモリー

 

これを知らない人がいるならばその人はきっと日本人じゃないと言っても過言ではないほどに松崎しげるといえばこれだ。

この愛のメモリーが、Mitoに物凄く似合うのだ。

雨なのに、夜なのに、愛のメモリーが流れたときのぼくの頭の中にはワインディングを軽快に走るMitoを俯瞰する映像が

 

「美しい人生よ、限りない喜びよ」

 

「美しい人生は、言葉さえおき忘れ、満ち足りた2人を包むよう」

 

「この世に大切なのは愛し合うことだけとあなたは教えてくれる」

 

おおおおお歌詞がめっちゃ頭に入ってくる!

Mitoの映像とともに頭に流れ込んでくる!!感動である。

Mitoをどうしても分かれなかったのは、車内で聞くものがロックだったからだ。

このクルマに激しいテンポの歌はまったくもって似合わない。

逆に90年台のジャパニーズヒットチャートを流すと物凄く合う。

これほどに松崎しげるやオフコースが似合うイタリア車をぼくは知らない。

ぜひともMitoを借りるのであればAmazonMusicで90年台のヒットチャートを流していただきたい。

彼女とデートをするならばAKB48よりは荻野目洋子をおすすめする。

ダンシング・ヒーロー(Eat You Up)

ダンシング・ヒーロー(Eat You Up)

 

我が青春時代の名曲だ。学生の頃、バツイチ女性とバイト上がりにCCZまで海を見に行ったとき、彼女のホンダ・プレリュードの中で2人で聞いたこの歌を思い出し、思わずMitoをドライブしながら涙がでそうになった。あのときの彼女、生きていれば多分40代後半だ。

Minichamps 1/43 ホンダ プレリュード 1992 (レッド)

Minichamps 1/43 ホンダ プレリュード 1992 (レッド)

 

Mitoは忘れていた青春を呼び起こしてくれる。十代、二十代、お金がなくってぽんこつな軽自動車に乗っていたけど、MDで荻野目洋子を、松崎しげるを、玉置浩二を、小田和正を…ときには激しくユニコーンを、アルフィを…自分は聞いていたではないか!あのポンコツの軽自動車が30代になったいま高級なイタリア車に変わる…大人になった自分を受け入れる瞬間がMitoから与えられた。

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どうしても好きになれなかったMitoだったけれど、青春時代のヒットチャートにのめり込み目的地である歌舞伎座タワーの脇に車を止めたときにはすっかりこいつのことが好きになっており、BGMの重要性に気づいた。これから助手席に座る彼女のために90年台のヒットチャートがすぐに流れるようにスタンバっておくことにしよう。

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つい数時間前までぼくの知らぬ男と六本木で食事をしていたという彼女はなぜかパラシュート素材でできたエコバッグとハンモックを持ってやってきた。意味が理解らない。

そんな彼女を引き連れて、東雲イオンで食事をする。BGMの平成ヒットチャートに対する彼女の感想はまったくなかった、悲しいものである。

時折、手動変速でシフトダウンをし、軽快なブリッピングで乾いたエンジン音を響かせれば彼女の心はめろめろだ!と計画したもののTCTの低速時のマナーがいまいちなのでゆっくり走ると助手席の彼女は「気持ち悪い」とか言い出すのだ。

ここは月島ではない、もんじゃは勘弁願いたいなと内心思いながらも無事に東雲に到着した。

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そろそろコメダの回数券でも買ったほうがいいんじゃないか?というくらいにこの友達とはよくコメダに行く。コメダデートという名古屋人が好みそうな(超絶な偏見であり、冗談です。愛知の方はマウンテンを投げないように)健全なデートを楽しむのがMitoを乗る上では似合っている。さくっと食べるものを食べてイオンを後にする。

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Mitoは500Xに比べれば随分とコンパクトだ。

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このコンパクトさが逆にいい、そう思える瞬間はある。

まともに動かない左腕をアームレストに置きながら助手席の彼女と話をするとどうだろう、この横方向の狭さ故に彼女との顔の位置が必然的に近くなるのだ。500Xよりも随分と近い。忘れていたが、これはコンパクトカーの利点だ。

なるほどMitoは外見のデザインのよさだけではない。

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居住空間もしっかりとイタリア人がデザインしている。この助手席との近さ…不意にキスをしても許されてしまうだろうこの空間を設計したのはイタリア人であることを疑う余地はない。狭さでいうならば軽自動車でも同様だが、軽自動車でそんなことをやろうものなら警察を呼ばれてしまう。でも安心してほしい、Mitoはイタリア車だ。イタリア車に乗っている男性にキスをされて警察を呼ぶような人は男女ともにこの世には存在しない。すべてが許されるブランド力、それがアルファロメオなのだ。某鈴木や某大発とは違う、同じ低排気量コンパクトカーなのに300万円もするのは、その”キスをしても許されるブランド力”に価値を見いだせてこそだ。

Mitoを運転していて地味に参ったのは500Xでは重宝したバックモニターがないことだったが、これもよくよく考えれば必要のないものだ。

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助手席の彼女の顔を眺めながら、ヘッドレストに手をかけてバックをする。バックモニターが全盛のこのご時世にそんなことをあえてするバカはいない。このヘッドレストに手をかける動作はエロいのだ。BGMが平成初期の歌謡曲であればなおのこと雰囲気が出る。忘れ去られたこういった儀式がいちいち似合うのはMitoには。

気温一桁前半の都内。

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雨雲なし、明らかにバイクに、ZZR1400に乗る格好ではないカップルが震えながら前に出てきた。二十代の頃、妻だった何かとこうしてハヤブサで雨の中タンデムをして震えていたことを懐かしく思うけれど、それはもう三十代の今はでは遠い昔。あえて寒い時にバイクに乗ろうというモチベーションにはなれない。自分の老いを認め、年相応のクルマでデートをする、そういうことが必要な年齢に突入したというただそれだけのことだ。

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助手席の彼女はアルファロメオがなんたるかを知らない。そんな彼女は知らないながらもいつも乗せているはずの500XよりもMitoのほうが洒落ていて好きだという。何よりも印象的なのはいつもは家から離れた場所に降ろせというのに今日に限って家の前まで行けというのだから驚きだ。

「おしゃれなイタリア車で男に送ってもらった姿をシェアハウスの同居人に見せたい」

お前はバブル時代にアッシーくんを使う魔性の女か!とそう思ったね、ぼくより1歳年上なだけなんだけども…不思議なものだ。

ただ確かなのは、車にぜんぜん詳しくない女性にもMitoの魅力は伝わるということだ。

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Mitoのドライビングは確かに楽しい。けれどもそれだけじゃない、大人のデートカーとしてもMitoの存在意義は大きい。30代では早い気がするが、40代の夫婦やカップルが買うなら最良のデートカーだろう。もちろん、イタリア車としては小柄で適度な実用性があるので女性がひとりで乗っても当然絵になるし、スポーティな車を欲する男性が乗ってもいい。世の中に3ドアのハッチバックは多々あれどアルファロメオのMitoほどに美しいデザインの3ドアはない。

ぼくにとっては不便であり、絶対に自分では買わないジャンルの車だけど貴重な体験をさせてもらっている。こんな車をレンタカーとして提供してくれたディーラーさんにただただ感謝!あ、別にABARTH595のほうがよかったとか思ってません(ぉ

でも本音でいえば500X帰ってこないかなぁ…と思いつつ。

まぁしばらくはこの美しいイタリア娘と付き合うことにしたい。