異動の挨拶のとき、彼女は皆の前で「新卒の気持ちに戻っている」、そう話した。
新卒から3年めの春を迎える。
ただ身体を使う業務から頭脳労働に切り替わる異動は、いちからという点ではまさに新卒の気持ちに似ているのかもしれない。
花金だというのに、きっちり残業だった。
信じられないことに、弊社には労務担当が不在だ。驚くべきことに、新卒が入るシーズンを前に労務が退職するという自体に、本来労務の「ろ」の字も知らない人たちが人海戦術で対応し、ましてや給与計算なんかも行う羽目になっている。
総務に異動したはずの彼女がなぜ労務の業務をやらされるのか、単純に人手が足りない。
一週間で目に見えて目顔が死んでいった彼女のねぎらいに帰り道に銀座に寄る。
東急プラザ銀座10Fにあるつるとんたんはこれで二回目の訪問だった。
一度目の訪問は今年の1月、ぼくがメンタルブレイクした日に、まだ付き合う前の彼女に連れてきてもらったのだ。普段仕事でメンタルを壊すことはないのだけれど、この時期は「肝試し」と呼ばれる案件に関わったが為に激しく病んだ。そりゃそうだ。壁1枚隔てた先に死体があるような場所としらず、その場所に真夜中に何時間・何日間も滞在したのだ。幽霊なんて信じないが、他にももろもろ大きめの仕事が重なって結果倒れた。そのとき、連絡を取りたいと思ったのが彼女で、気分転換に銀座に来たことを覚えている。
デート向けの店のように想えるけれど、ぼくはあまり好きじゃない。
味が、ではなく、店内に流れる演奏のおかげで話が聞こえづらい。
耳がよくないので大音量が流れる空間にいると人の声に集中できない。
だからゆったり話すのであれば二軒目のバーなんかに行きたいところ。
銀座には全然行かないが、たまに行くとここに顔を出す。お酒なんか強くもないし、でもなんとなくフィアット乗りならルパンだろって安直な気持ちで昨年くらいからちょこちょこお邪魔させてもらっている。
そういえばルパン三世がまたはじまった、今度はフランス!
うどんは二玉までなら同じ金額でいけるらしい。
この日はなんとなく鴨汁うどんにしてみた。
こちらは明太子だ。福岡の人ってとにかく明太子を食べるよな!っていうと「くらすぞ、きさん」って挨拶されるので怖い。
挨拶代わりに博多で「くらすぞ、きさん」っていうと人口の何割かは殺し屋の街なので生きては帰れないはず。
ちぃ覚えた・・・いや怯えた。
翌日は久々に映画を見に行った。
スパイ映画といえばイギリスはMI6のジェームス・ボンドだろうが、今回はロシア。
元CIAの人が書いたものが原作だけあって「CIAは人道的、KGBは非人道的」みたいな書かれ方が気になるところで全体的に「おそろしあ」って感じ。割りとグロ目のシーンも多いし、全体的に暗い。カップルでいくなら同じR指定でも18禁指定の娼年のほうがカップル向けだと思う。
同じセックスのシーンを見るにしても、娼年であればセックス中に殺されたりはしないし、生皮を剥がれるようなシーンもないだろう・・・娼年の作中では生皮を剥がれたり、鉄棒で頭を殴られたりすることで快楽を覚える変態女性はいなかったはずだし、狙撃されたりもしない。全体的に安心してカップルで見られるはずだ。なんでレッドスパローを見に行こうと思ったかって、まぁ仕事に疲れたからってのが単純な理由だ。
4月はまだまだはじまったばかり、頑張ろう。