スーパーチャージャーを解き放て
ZH2はカタログで200PS/14kgf・mと必要にして十分なスペックがある。
トルクなんか1400cc並だし馬力にしたって並みいるレーサーと同等で、日本メーカーのネイキッドバイクでは断トツの高出力モデルだったりする。
納車直後は「速い!」と思ったし、馬力とトルクの暴力装置みたいなイメージに驚きはしたものの実際問題これより速いバイクはいくらでもあるし、ひどい言い方をすれば「過給機が付いているのにその程度か?」と思うようになっていくのが人というもの。
出力だけで見ても1,000ccクラスの自然吸気エンジンは当たり前に200馬力を超えている。同じ排気量で過給機が付くなら、過給機がついている方が当然ながらに馬力・トルクともに上でなければ困る(困らない)。
実際H2シリーズだけみてもH2Rは300馬力を超えているし、NinjaH2でも230馬力とか出しているらしいけど、ZH2はストリートでの乗りやすさ、体感できる速さを重視しているためか低中速型のスーパーチャージャーになっていることもありカタログ馬力はそこそこでも実際に高回転に行くにつれてタレ感が出てきて速さを実感できなくなる。
またH2シリーズには自分は「呪い」と呼んでいるけど、10,000rpm以上で露骨に出力が絞られる制御が入っていて、だから高回転まで回しても思ったよりパワーが出ていない体感が強い。
下はトルクフルで速いが、上はレーサーの方が気持ちがいい。
スーパーチャージャーが付いているのにそれはそれは残念な話なのでECUをいじることでどれだけ性能が解き放たれるのかを見てみたい、その好奇心には抗えなかった。
乗りやすいイメージは数字にも表れる
ZH2のECUチューニングを行えるショップは関東圏で片手で数えるほどしかない。
NinjaH2ともなればまた数店増えるのだけど、なぜかZH2は少ない。基本は一緒じゃないの?と思うんだけど需要の問題なのか、それともECU側で何らか違いがあって解析が難しいのか…そのあたりはよくわからないけど、自分は前者の「需要のなさ」が理由なんじゃないかと思う(何
何しろ1,000台も売れていないバイクだし、オーナー自体もNinjaほど過激なチューニングを求めていない可能性もある。だからショップ側の頼まれたらやるけれど…みたいな後ろ向きな理由があるのかもしれない、知らんけど。
ともかくそんなにショップを選べないので、自分は近所のショップに依頼した。
バイクを預けなきゃいけなかったので、バスと電車で帰れる場所じゃないと都合が悪く、そういう意味ではバスで30分弱のところにショップがあったのは運がいい。
作業はおよそ一週間、対応内容はECUといっても燃調とかを細かくいじるようなものではなくリミッターカットとなるそうで。先ほど書いたH2シリーズの10,000rpmの制御もとっぱらい本来の力を解き放つという作業になるらしい。
それと同時により吸気効率が高いエアクリに交換。
ただのウレタンスポンジなのでそりゃ吸気効率は高いだろうねw
形状のパワーアップに寄与するところらしい。ショップのおすすめだったので同時に交換して、もともと入れていたDNA製のフィルターとの違いも確認したいところ。
一週間後に引き取りに伺った際、シャシダイ計測の結果もいただいた。
パワーカーブは細かいことを抜きにしても大きく上がっている。
回転数の数字が見えないと思うけれど、見えなくても「呪い」がしっかりかかっているポイントがわかるねw
ノーマルECUでは10,000rpmから先がまったく伸びず、出力も落とされている。最高出力発生回転数は11,000rpmとカタログ上はなっているのものの現実的には10,000が発生回転数みたいなもので後半の2,000rpmはもはやおまけだ。
そして、乗りやすいという体感がはっきりしたの計測結果。
ノーマルでは実測値で160馬力しか出ていなかった。。。
むかし乗っていた1,400cc化したハヤブサが実測値で200馬力近く叩きだしていたし、160馬力だとそりゃ速いとは感じるだろうけど劇的にすごいと思うほどのものじゃない。
このノーマル状態でエアクリをMWRに交換しただけでも4馬力もUPした。
ノーマルとはいえDNA製のエアクリが入っており、純正エアクリよりも吸気効率は高いから出力向上していたはず、それにも関わらず4馬力も伸びしろがあるのがすごい。
そしてリミッターカットをしてスーパーチャージャーの全開を解き放った結果、200馬力にぎりぎり届かない197馬力をたたき出した。
扱える、扱えないは問題じゃない。それはロマンの話だ
元々の状態より30馬力も上がれば絶対的な体感速度は恐ろしいことになるはずだ。
四輪だって30馬力もあがれば「おお!」って思うのに、それを二輪でやれば「おお!」で済むとも思えない。
実際160馬力だって十分に速かったわけで、300km/hは無理でもメーター読みで260km/hまでは見えていた。
素人ライダーが200馬力近いそれを使いこなせるかといえば、否。
なんならX-ADVの50馬力弱でも十分に速いのだから4倍近い出力は公道では絶対に不要なはず…それでもやるのは、それが大型二輪だからだ(何
普通に乗るなら原付でも十分で、贅沢をいっても400ccもあれば公道は十分だ。
維持費を考えても大型二輪を所有するメリットはないけれど、そもそも大型二輪に乗ることはメリット・デメリットで語る話ではないし、変な言葉を使うなら「見栄」とかそれこそよくいう「マウントを取る」という意味合いでしかない究極の趣味カテゴリだ。
大型二輪でもレーサーやアルティメットクラスを買うような人は、それ自体の性能を使い切ることに重きを置いている人はそんなにいないんじゃないか?それよりもそのマシンが持つ神話性(レースで優勝したとか)やカタログスペックにときめいたから買うことが多いはずで、自分だってZH2は「スーパーチャージャーがついた量産車唯一のネイキッドバイク」という物珍しさだけで買っている。
だから性能を使い切りたいという願望は一切なく、ただ秘めたる性能を発揮したZH2がどうなるのかを体感してみたい、それゆえのリミッターカットチューンだった。
乗りやすいか、乗りにくいかで言えば「乗りにくい」
店で車両返却を受けて自宅まで一般道…その印象は「めちゃくちゃ乗りづらい」だ。
低速トルクがノーマルよりも増えているせいか、低速ギアだとぎくしゃくしてまともに走らない。アクセルレスポンスもよすぎてちょっとスロットル操作をするだけで前へ吹き飛んでしまう。
これはパワーよりもトルクの影響だと思う。
ZH2のトルクはナナハンで排気量のすべてをトルクに振っているX-ADVの最大トルクをX-ADVの半分の回転数2,500rpm付近でたたき出してしまう。この回転数は街乗り巡行で多用するところでありそりゃもう獰猛でしょうよ。。。
197馬力でカタログ馬力に近くなったことよりも、実用域のトルクがありすぎることが乗りづらさを生んでいるなこれ。。。
ECUチューニングで燃調をいじっていけばエンジンブレーキの効きを弱くしたり、アクセルを開けたときのドンツキを抑えることができる(スロットルを戻しても燃料を吹くようにする)けど、このショップのチューニングではそこまでやってないってことかもしれない…テストライドもしたって話だったけど、この乗りにくさはZH2では当たり前だから気にすんなってことかな。。
低中速は乗りづらいけど、高速に入って高回転まで使えば気持ちいい!
ピークパワーで40馬力近く増えたことは明らか体感できる、全然別物!
自分のZH2はチェーン交換のタイミングでリアスプロケを46→42Tへ超ハイギアード化した。
ZH2ってNinjaH2とリアスプロケのサイズが違っていてクロス化されていて、それはキャラ付けとしてZはストリートでの気持ちよさを追求していたってのがよくわかるんだけど、その代償として最高速は300km/hに届かないし、高速燃費も悪化傾向にあった。
そして10,000rpmの呪いの影響でECUをいじらない場合は46Tだとおいしいポイントが10,000rpm以上のところにきちゃって速度が乗らない。
42Tまで落とすことで10,000rpm手前で速度を載せていけるようになったので高速域での速度の乗りは意外と純正よりよくエンジン回してる限りはハイギアード化されている割には加速感はあった。
ただ低中速では若干のもっさり感はあった。
それがリミッターカットによって完全に消え、もっさりどころか6速に入れているのに3速か?ってくらいの印象になった。
6,000rpmくらいまではノーマルもリミッターカットも馬力は変わらないんだけどね。
なんなら変更前+MWRフィルター仕様のほうが6,000まではパワーがあった。
低中速が乗りづらいので高回転を多用する乗り方になり、アクセルではなくクラッチで速度調整をするようになったので渋滞にはまるシチュエーションでは「こいつへたくそか?」って乗り方になっているけど、もはやそうしないと乗れたものじゃないw
リアのアクスルシャフトの交換、そして第二のサスペンションを装着
試乗もそこそこに帰宅してアクスルシャフトを交換。
以前からこの手のアクスルシャフトには興味があって、どれだけ効果があるのか?と思ってたんだけど、謳われる効果として直進性がよくなるとか、トラクションがかかるようになるとかあるので今回のリミッターカットでパワーアップするだろうから装着してみる。
そして、ギルズツーリングのセーフティーアクスルナットも同時装着。
純正は割ピンの普通のナット、サイズは32mmだったのでソケットを購入w
この純正のデザインと信頼性はあるけれどいちいち交換しなきゃいけない割ピンが面倒なのでアクスルナットを交換する。
割ピンがない代わりにイモネジで吸着を密にして緩み止めにしてる。
ZH2のパワーとトルクに耐えられる?大丈夫だろう。
イモネジを回すとねじ山にがっちり食い込み微動だにせず。
イモネジを締めただけでも動かないので大丈夫なんだろうね。
チタン製なのでかなり軽い!
純正は59グラムあったから半分以下になった。
ただ、金額は1.4万円もするので…割ピンが1本44円だったことを考えるとw
特にこだわりがないならメリットもそんなないので純正でよいかとw
そして大物のオーバーサスペンションを装着する。
いわゆるマスダンパーと呼ばれるもの。
トラクションをかけることに一役買いそうなのと、ZH2のノーマルのサスペンションはただ硬いだけで首都高などのギャップが激しい場所では跳ねて怖い思いをすることが多かったのでこれを導入してどうなるのかをチェック★
上記の3点を組み合わせるとこんな感じねw
これだけで8万円くらいする無駄に効果な組み合わせだけどトラクションをしっかりかけるということはそれだけでもかなりの安心感を生むから安いと思ってますw
ナットの重量も測ったので他のもの測ってみよう。
オーバーサスペンションは517グラムなので純増。
ゼロポイントシャフトも純正より重い562グラム。
別に軽量化がメインな目的ではないからどうでもいいのだけどね。
早速交換のためにアクスルシャフトを抜く。
プラスチックハンマーとかでコンコン叩けば外せる。
抜けた。グリスは結構ついておりADVよりはちゃんとしてた。
コストカットとかでグリス量を減らすこともあるらしいけど、ADV150のようなコスト第一のバイクとは違い大型二輪ともなればこの辺はしっかりされている。
オーバーサスペンションの土台を付けてシャフトを通して完成。
20分もかからずにできる作業、工具を買いに行く時間の方が掛かった。。。
オーバーサスペンションを付けてテスト。
リミッター解除は高速道路で本領を発揮する!!
街乗りの乗りづらさからはイメージできないくらい、高回転シフトはポンポンと軽やかに決まりスムーズに速度が乗っていく。
パワーアップで恐怖の方が大きいかなと思ったけど意外や意外な話でノーマルよりも安心感がある(高回転ゾーンのみ)。
官能的なサウンドとエンジンのフィーリング、かっちり決まるシフトが五感に訴えかけてくるのでバイクとライダーの一体感が出てノーマルよりも不安がなく、気持ちのズレもなく攻めていける。
10,000rpmを超えても頭打ちはなく12,000まできっちり回る。
これは相当に気持ちがいい。今まで頭打ちで「伸びねぇ…」と必死にスロットルを開けていたところから、開ければ開けただけパワーが出るのできっちり12,000まで回して楽しめる(もちろんとんでもない速度が出ているw)
それでいて回さなければ高速燃費も23km/Lくらいは出る。
リミッターカットは高速が無敵だ、もうレーサーにだって遅れを取らない。
ただエンブレの強さやレスポンスの良さが仇になり、すり抜けとか渋滞がまもとに乗れないのでライディングモードを変えたりしてどうなるかをテスト。
ぶっちゃけ変化はなかった(何
X-ADVは細かにエンブレの効きやレスポンスをコントロールできるけど、カワサキのライディグモードはトラコンと出力のみという極めてシンプルなもの。
ハヤブサのようにモード設定がありすぎても設定が面倒だったり、そんなにいじらねーよ!って人もいるんだろうけど、シンプルすぎるのもこういうときに困りものw
リミッターカットのトラブル
そして走行テスト中に気づいた、クルコンが使えなくなってしまった…
正確にはクルコンは動くものの、90km/hに設定したとするとアクセルを開けたり、閉じたりをラフに繰り返しながら加速し、90km/hを超えたところまで速度が上がる。アクセルをONとOFFだけで操作しているような感じで危ない。
ショップに確認したけどそんな事象ははじめてのようで、原因不明で調査をするということ。
こういう予期せぬトラブルが現代のコンピューター制御のバイクでは起きるので、めったに起きることではないにせよこういうリスクもあるんだよ…ということで。
クルコンさえ使わなければいいので、解決するまではクルコンは封印。。。
クルコンがあるからZH2にしたのに!ってとこもあるので、なるはやでどうにかしていただきたい気持ちはある(´;ω;`)ブワッ
オーバーサスペンションの確かな効果
リミッターカットはいろいろあったけど、オーバーサスペンションはいい感じ。
プラシーボだろ!と言われるので、外して同じルートを走る。
ちなみに六角レンチ1本でダンパ部分を取り外しできるので、セッティングを試したいときにも簡単にできるのがオーバーサスペンションのよいところ。
これギャップが酷い路面で効果がはっきり出るね。
首都高のように路面のつぎはぎがある場所はZH2のサスペンションだと結構跳ねて、それゆえに怖い思いをすることも結構あったのだけどオーバーサスペンションでセッティングを出していくと路面にリアタイヤが吸い付くように走っていく。逆にダンパの減衰?を変更すると純正より跳ねたりするのでこんなに小さなものなんだけど効果がしっかり出ていることがわかって面白い。
サスペンションの減衰やプリロード、オーバーサスペンションも含めるとセッティングの幅が広がりすぎてそれこそ沼。電子制御サスペンションではないので走る路面に自動で合わせてくれるわけでもないのでどこに焦点を置いてセッティングを出すかは肝だと思う。
足回り出来はかなりよくなったけどリミッターカットの乗りづらさが顕著でつらいw
ぶっちゃけ160馬力でも不満はないと思うのであのままでもよかったんじゃね。
それをいったら元も子もないんだけど。。
そうはいってもやっぱり使えるものは使い切りたいのでねw
ZH2のカスタムもECUまでやれたのでひと段落かな…
アクスルナットは200km程度走っても緩みなし。
そういえばリコール出てたね。
カムチェーンテンショナーはこれやね。
サービスマニュアルで見ても自分で交換はできそうだ。
冷却水のパイプが邪魔そうなんだけど外さずにいけそうか?
来月に12か月点検があり、そこでオイル漏れするインテークダクトの交換も入るのでついでにやってもらえるならやってもらおう。
全体的にいい感じになったなぁ…
あとはこの乗りづらさになれていければいいのかなw
ショップによってチューニングの方向性は変わると思うのでもしかすると現車合わせとかで乗りやすいセッティングにしてくれるところもあるかもしれないねw
12月は忙しいのでほとんど乗れないので慣れるためのロングもできなさそうw
ちょっと通勤できる仕様ではないのでADVに乗ると、このまったり感がありがたいw
いやほんと公道ではナナハンもあれば十分よ…50馬力そこそこでなんも不満はないw
怖いもの見たさで快適性を捨てた全力を見たい方にはおすすめのリミッターカットですが、よくできた万能な乗りやすさで不満がないならそのままが全然いいと思いますw