使い捨てないエンジンオイルフィルター
タイトルの通り今回は再利用可能なオイルフィルターを買ったので交換とレビュー。
買ったのはK&Pという海外メーカーの商品。使い捨てないその原理は単純でフィルター部分が金属製なので取り外して洗ってあげれば理論的には半永久的に使うことができるというもの。よく知られたところでエアクリーナーはそういったものがある。
四輪でも二輪でも使っている人はそれなりにいると思う使い捨てないエアクリーナーのオイルフィルター版が今回買った商品。海外ブランドはなかなかどうして怪しいところもあるとはいえ、国内でも利用者はそれなりにおり、また航空機などに採用されているという実績も鑑みて導入を決意。
某ネットショッピング(某の意味w)でX-ADV用の適合保証商品として出てくる。
金額を見てのとおりえげつない高額商品だ。
オイル交換を自分でやる人ならフィルターの価格は目にしたことは当然あるはずだ。
純正互換などで探しても大体1,000円弱くらいで買える、なのでK&P製品は単純計算26倍もの金額となる。フィルターの交換頻度はメーカー推奨でも多くはオイル交換2回に1回なので仮に3,000kmでオイル交換するとしても元を取るには17万kmくらい走らないといけないことになる。
再利用可能だから長い目で見ればお得と言っても1台のバイクを17万kmまで乗るというのはなかなか凄いことだし、一体何年かかるんだという気もする。
普通の神経をしていればコスパだけで買える商品じゃない、2.6万円あれば別なパーツに投資したい気持ちも強い。
そんな中、調べているとあることに気づいた。
コラボモデルとそうでないモデル
先ほどの2.6万円のほうは某アフターパーツメーカーとのコラボ商品だったが、実はこれ素のモデルは1.7万円ほどとおよそ1万円安い価格で販売されている。
商品概要を見てもその違いはロゴとカラーリングくらいしか差がないように思えた。素のモデルでもブラック塗装のモデルは3,000円高かったりカラーリングで金額がかなり変わってきてしまいうけれどX-ADVの場合は「S1」というモデルであれば適合するようだ。
性能的に変わらないのであれば2.6万円を払う必要はない、カラーが変わりロゴが入ったところでX-ADVの場合はまったくその恩恵がない、理由は後程説明します。
かくして無事に1万円ほど安いフィルターを買うことができた。
2.6万円はなかなか抵抗がある金額だが1.6万円であれば…それでも無抵抗で買えるというものでもない気がするけれどその恩恵だけを見れば抵抗感は和らいでいくはず。
では早速届いた商品を見てみよう。
質感の高さと性能に期待が持てる
商品はフィルター(ケース部分)とフィルター、そして予備パッキンと専用フィルターカップレンチとなる。パッキンは1つで裏表で2回使用可能なので都合4回分が付いてくることになり、パッキン単体でも代理店などから買うことはできるようなので長期利用でも問題なさそう。不安であればそこだけ早い段階で発注してもよいかもしれない。
カップレンチはフィルターケースの形が独特なので恐らく専用品なので紛失すると買いなおさなければいけないだろうから要注意。
フィルターエレメントは純正のろ紙に変わり金属メッシュになった。
フィルターエレメントをろ紙から金属に変えることでどうなるのか?ろ紙はその名の通り紙のようにオイルを吸収してしまうし、エンジンやオイルの熱で素材が膨張したりそれ自体が大きな抵抗になりオイルの流れが悪くなる。
金属のメッシュであればゴミはしっかり捕まえながらオイルは吸収せずにそのまま遠し、また熱による膨張もろ紙よりは少ないことから高い透過率を安定してキープすることができオイルフローを純正フィルターよりも改善することができる。その透過率の高さはメーカー発表では多くの純正品(ろ紙)の7倍というから驚くばかり。
オイルフローが改善されることで特に高回転時のパフォーマンスに期待が持てるとか、純正フィルターは高温時には大きくフィルターとしての性能が低下するのでそれを安定的な保護性能を発揮することでエンジンの保護につながるとかいろいろと言われているけれど果たして効果は体感できるのだろうか。
同じフィルターで言えばエアクリは交換するとブローオフバブルのサウンドがよく聞こえるようになったりエンジンがより多くの空気を吸えることでパワー感の向上(逆にトルクは減ったように感じられる)が体感できたりするけれど、オイルフィルターの場合はパワーアップとか感じられるのだろうか?それは交換後の楽しみでもある。
装着は純正とまったく同じで簡単
オイルを抜いて純正フィルターと交換するだけなので装着自体は簡単。
フィルターケースの形状は凹凸があるヒートシンクも兼ねる形状になっており、この時期はあまり意識しなくて済むものの夏場などは走行風によるオイル冷却効果も期待できる。素材自体もすべて金属なので純正よりは冷えるだろうと思う。
先ほど2.6万円と1.6万円の差はカラーとロゴの有無で、だから無印無塗装の標準タイプでよいと書いたけれどX-ADVの場合はそのロゴやカラーにこだわっても意味がないのは装着時の写真を見て気づくと思う。
自分で交換したことがあるなら尚のことわかると思うが…
この場所にはオフローダーぽく保護用のカバーが取り付けられ、これによってフィルターはまったく見えない位置に来る。
無理やり下からのぞき込めば見えないこともないがそこまでしなければ見えないということは実質まったく見えないのと変わらない。見えない場所にこだることを「粋」と表現することもできるけれど、自分はその見えない場所にプラス1万円のお金を払うならそのお金でもっとパーツを買うとかガソリンを入れて走りに行きたいと思う。
これはX-ADVのようなフルカウルだからという話で、普通のネイキッドタイプなどであればフィルターはむき出しで外から見える位置に露出していることが多いのでそのチラ見えするフィルターでおしゃれを楽しむのもチューニングとしてはありかもなとは思う。
低回転型エンジンの高回転におけるパワー感向上とは
オイルも変えたしどこかに走りに行きたいと思い、昼頃から行って帰ってこれる場所ということで南箱根バイカーズパラダイスへ…ここであれば高速道路も使うため交換したフィルターの効果を感じられるかもしれないと思った。
高速走行でのオイルフロー向上は体感しやすいかと思ったが、正直なところ100km/hくらいで巡行している分には違いを感じることができなかった。
ただこれは当然と言えば当然で、このX-ADVはナナハンながら超が付くほどの低回転型エンジン、何しろ最大出力の発生回転数は7000回転だ。100km/h走行では回転数は3100回転ほどと低めでありその領域ではパワーよりもトルクで走ることになる。
だから高回転時のオイルフローを向上させ出力向上につながるようなパーツはマフラーもそうだが体感できるシチュエーションがこのバイクでは意図的に引き起こさない限りあまり起きえないものなのだ。
それでは!と6速から4速まで2速ダウンし、高回転にタコメータのゲージを貼り付けながら追い越し加速をやってみると先ほどの印象とは違い確かに若干ではあるがパワーが増えてかなというような力強さも見せた。
ただこれはオイルそのものを変えた直後ということもありフィルター単体の効果かと言われれば怪しいところもあるが、それにしても純正よりは若干ではあるものの力強さを感じられるのではないかと思う。
ただ、これはパワーアップとかそういうもののためにそもそも買ったわけではない。
メンテの手間を省くための選択肢のひとつとしてのコスパの良さ
バイパラではレンタルバイクとしてADV150があり、つい数か月前まで乗っていたはずなのにずいぶんと懐かしいやつに出会ったなという気持ちになる。ADV150も通勤快速のスクーターとしてみればかなり優秀かつ面白いやつだったし、2台保管できるスペースがあれば維持していても全然よかった。150ccなんて車検もないし維持費なんて保険料くらいなものだから。
プジョーのジャンゴもあった。これは150ccかな?ネタ的には四輪も二輪もプジョーというのはありだけど輸入車はパーツが少ないことがネックで自分が大好きなカスタマイズ・チューニングはジャンゴではほとんどできないからパス。
ノーマルで乗る気がないというのはX-ADVを見てもわかる通り。
9月末に納車して3か月しないうちにだいぶカスタマイズはできた。まだ大物は残っているが、早い段階でいじりたい箇所はすべていじったつもりだ。マフラーや今回のフィルター、性能向上につながるものは新しいときにいじっておきたいというのが自分の最近の考え方で、メンテナンスなどで新車時に近いコンディションにできるとはいえコストをかけて新車に戻すわけではないのだからやはり新車のコンディションから普通は徐々に劣化していく。
既に走行距離は7777kmと大台が近い、普通のライダーよりは乗っていると思うけれどやはり新車時のコンディションからは劣化していると乗っていれば絶対に気づく。そういう劣化をする前に最高に近いコンディションのうちにパーツを変えることでよりよい時点で本来のおいしいところを味わいたい。
ターンパイクのような場所でも四輪の後ろについて高回転キープで走りを楽しむことができた、確かにパワーはわずかだが挙がっているのかもしれないし、何よりスムーズに吹けあがる気もする。
もともと実用重視のエンジンなので気持ちよく回るエンジンというわけでもなかったが、多少は楽しいエンジンになったかなという印象に変わった。
わずかな体感のために1.6万円払ったのかと言われれば確かに微妙と思う人もいるかもしれないが、このフィルターのよさはもちろんそこだけではない。
自分でオイル交換をするユーザーにとってフィルターのごみ問題は頭が痛いはず。何しろ金属とオイルを含んだ紙というデンジャラスな組み合わせであるフィルターを分解して捨てるのは普通の家庭ではかなりハードルが高く、自分もサンダーのような分解できる工具までは自宅にないのでいつも10個単位でまとまったら産廃業者に依頼して回収してもらうなどしていた。もちろん処理費用がフィルター代の他に掛かる。
オイル交換は量販店などでもやってもらえるし、工賃もそこまで高くはない。むしろ個人でやるほうがごみ処理などの手間を考えるとコスト高なのではないかと思うくらいなのだが、それを解消できるのがこの再利用可能なフィルターだったわけだ。
ただそれは多くのオートバイに対して当てはまることでX-ADVの場合は厳密にはゴミゼロにはならず、なぜならDCT搭載車はエンジンオイルフィルターともうひとつDCTフィルターがある。
これも金属、ゴム、ろ紙の組み合わせなので結局ゼロにはならないが、それはDCTモデルだからでありMTであればオイル処理箱だけでオイル交換で出るごみは処分可能になるのでかなりメリットは大きい。
DCTモデルであってもオイルフィルターはDCTフィルターよりもかさばるのでゴミを減らすことにはつながるので悪いことではないと思っている。
そしてフィルターの交換頻度を気にしなくて済む。
オイルフィルターの交換頻度は多くの人がオイル交換2回に1回だと思う、毎回フィルターを交換するブルジュアな人を自分は知らないけれど中にはそんな人がいるのかもしれないけど太古の昔から我々は「フィルターはオイル交換2回に1回」と聞いてきているはず。
そうは言ってもフィルターメーカーからすれば毎回交換してくださいと言いたくなるだろうし、毎回交換しても悪影響はないだろう。
お分かりだと思うけれどフィルターにはオイルが残る。
X-ADVのマニュアルを見るとオイル交換時とフィルター交換時では交換容量が0.3リッター違うのでそれだけ古いオイルが残っている。自分で交換するとよりよくわかるけれどフィルターを外すと結構どばっとどす黒いオイルが出てくる。
だからフィルターを交換せずにオイルだけ交換すると新油と古油はほんのわずかではあるが混ざってしまう。もちろん、そこまで厳密に新油に入れ替える必要はなく(フィルターを外してもラインなどにオイルは残る、上のマニュアルでも全容量は4Lだが最大で3.4Lまでしか交換できない)そこまで気にする必要はないとはいえ外せるところは外して綺麗にした方が気持ちもいい。
それはわかっていてもコスト的に抵抗感があったその作業を行えるようになることもこの使い捨てないオイルフィルターに変えることのメリットだ。
何よりこのフィルターは「使い捨てない」ことでバイクを乗り換えても使いづけることが場合によっては可能ということ。
規格が合えば次のバイクでも使うことはできるから元を取ろうと1台で10万km近く乗る必要もない。また、次のバイクで使えないにしてもメル○リやヤフ○クで売ることもできる。
売れればむしろお金がいくらか帰ってくるので売却額を購入金額から引けば実質的にはもう少し安く買えたことになる。
このように性能向上よりもメンテナンスなどを見て長期的に使うとなればコスパは純正フィルターよりよいのではないかということで買ったものなのでもしそうしたところに共感できるのであればフィルター交換時の選択肢としてこれは充分にありなのではないかと思う。