3008を過ごした季節
早いもので3008を納車してから1.5年が経過し、走行距離は先日55,555kmのゾロ目を迎える。
このペースは過去の所有車からしてみればちょっと多いかなくらいなもので、特段過走行とも言えない。
一般的には充分に過走行に該当するし、ただでさえ査定額がやばいプジョーでこんな使い方をすれば車検ではまぁ値段なんかあってないようなものだろう。だから乗りつぶす気満々だ(ごめんね、インポーターの皆さん)。
さて、誰もこんな内容を期待はしていないし、そもそも真っ当な評価を読みたいのであればその辺の自動車系ブロガーさんの記事でも読んだ方が1億倍参考になるとは思いながらも、自分も3008のオーナーなので、これまでに感じ取った3008のちょうど車検まで半分という期間の中期レビューを書いてみたいと思う。
個人の感想なので、感じ方は人それぞれなのでご注意をば。
君に3008を乗る決意をさせたものはなんだ?
早速話が脱線してしまい大変恐縮ではあるけれど、最近ガンダムUCを最初から一気に見た。きっかけは腹痛がひどく、一日の大半をトイレで過ごす時間ができてしまったのでNetflixを彷徨っていたらいい時間つぶしになるなと思ったからで、でもさすがはガンダム、名言も多く一気に見れてしまう魅力がある。
劇中でかの有名なブライト艦長がこんなことを言っている。
そのとき、君の目の前にガンダムがあったことは偶然かもしれない。これまでガンダムに乗ってきた者たちも、皆そうだった。だがガンダムに乗るかどうかは自分で決めたことであって、偶然ではないはずだ。違うか?
その時、君にガンダムに乗る決意をさせたものは何だ?
ep5「黒いユニコーン」より
3008に置き換えてみると妙にしっくり来た。
そこにそのクルマがあったのは偶然だったかもしれないけど乗ると決めたのは確かな自分の意志だ。
人によっては自分の意志ではなく、誰かに勧められたり、家族の決定だったり、不本意な要素が介入した人もいるかもしれないが、自分は間違いなく自分の意志で、たった3回の試乗で3008を決め、なんなら試乗しなくても3008を選ぶつもりでいた。
そう決意させるだけの魅力が3008にはあった、そういうことだ。
断言しよう、3008は世界で一番カッコいいSUVだ
アムロだってサイド7にジオンが侵攻してきたとき、目の前にあったモビルスーツがガンダムでなく、ボールだったらきっと乗らなかっただろう。
ボールで1年戦争を耐えきれたら真にニュータイプだと思うけどたぶん違う。ガンダムがそこにあって、そのガンダムの見た目に思うところがあったから乗り込んだに違いない(ほんとかよ)
3008だって同じだ。そのときディーラーにあったのが最近のB〇Wのやばい面構えだったらたぶん何の興味も持たなかっただろうし、検討すらしなかった。
どんなクルマも、ほぼ例外なく最初はエクステリアを見る。そのエクステリアデザインが自分の興味を引けばやっと次の段階に移れる。スポーツカーとかは違うと思うけど、少なくとも大衆受けする乗用車で、しかもSUVなんて飽和状態のジャンルでひときわ目を引くデザインであるからこそ3008を手に取ろうと思えた。
メラビアンの法則というものがある。
採用を担当したことがある人も、ない人もメラビアンというものを聞いたことがないかもしれないが「人の第一印象は出会って数秒で決まる」と言われたことくらいはあるのではないだろうか?それがメラビアンの法則と言われるものだ。
クルマ選びも採用の面接と何ら変わりないと自分は思っていて、どんなクルマも最初は視覚情報でしか判断できない。もちろん、真横を偶然とおりすぎたクルマの排気音が好みだったとかマニアックな話はあるかもしれないが、嗅覚、聴覚から得られる情報に比べ視覚情報で得られる印象は実に55%に及ぶというからやはり目で見た第一印象の効果は大きい。
歴戦のプロたる面接官でも採用の面接でベストマッチする人材を取れることは非常に稀で、専門職ならまだしも総合職系採用でごくわずかな時間で最高のひとりを採れる可能性は限りなく低い。第一印象に引っ張られて、その他の要素を加味できないということもよくある話だ。詐欺師の見た目がいいのと同じだ、メラビアンは逆を返せば視覚情報で人は簡単に騙せてしまうというわけだ。
クルマ選びも難しいが、3008は少なくともデザインで騙されて中身がチープであるとかそういうことは一切ない、それをこれから掘り下げていこう。
まずは平均点を採れること
輸入車の多くは国産車と比べればどこかしらに不満を抱える。それはある意味で当然のことで環境や文化がまるで違う国の商品を使うのだから仕方がない。仮に日本でバカ売れするのであれば日本仕様としてコストをかけてくれることもあるだろうが、プジョーのようなまだまだ販売台数も多くはないブランドではそこまで日本向けに作るようなことはありえない。
たとえばエアコンの効きが弱いというのも、それはフランスに比べて日本が高温多湿なだけで現地では何も問題がなかったはずだ。
悪名高いかのトランスミッションAL4だってそもそもMTで乗るのが当たり前みたいな時代と文化があった頃のクルマをATが大半を占める日本で使う方が悪いのだ。そもそも道路事情も違うし、東京都内で使えばむかしの輸入車の大半は夏場の渋滞には耐えきれないはずだ。
最近はどのブランドもグローバル展開を意識したつくりになっているからそう多くの不満は出てこないが、それでもやっぱりフランス車はほんの数年前まではまだまだ国産車と比べれば不満は多く、その日常での使い勝手などの不満に目をつむりつつもおしゃれだからとか乗り心地がいいからだとか、そういう他の要素をあげて言葉を悪く言えば誤魔化して乗ってきたはずだ。
だけどプジョーは現行の3008からそこまで利便性や機能に関して不満を持たせなくなった。これであれば普通に日本人が文句なく使えるだろう、日本車から乗り換えてもそこまで不満も不便も感じないだろうと思えるような平均点を狙える装備になった。
前席にドリンクホルダは2つ付いたし、グローブボックスは相変わらず使い物にならないとはいえセンターコンソールとドアポケットに小物入れを付ければ収納的にも不満はない。
何度かの仕様変更を受けてAppleならCarplay、AndroidならAndroid AUTOが使えるようになったし、TVを見る必要がないのであればOPのカーナビを付けなくてもスマホがあれば大抵のことはできてしまう。
ヘッドライトもLEDになっていて馬鹿みたいに明るいし、この辺でも国産車には引けを取らない。
ADASについても機能的には充分。
自分は車線逸脱防止はOFFにしているが、アダプティブ・クルーズ・コントロール(ACC)も30km/h以上から停止までは機能するし何も不満はない。
停車から発進が自動になればさらに渋滞は楽になるかもしれないが、別にこれでも何ら問題はない。昭和のクルマだったらそもそもACC自体が存在していなかったし贅沢な悩みだ。あくまで主役は人であり、ADASはその乗り手を少しだけ助ける、その程度のものでいい。自分としては何の不満もないわけだ。
ラゲッジも後部座席利用時で520リッターあるそうで、このサイズは国産で言えばCX-5よりわずかに広い。片側だけ後部座席を倒せば大人3人でキャンプに行けるくらいの荷物はルーフキャリーを付けなくてもいけるのではないかと思う。
積み方が雑でも全然いけたしね。収納に関してもこのクラスのSUVとしては平均以上のものはあるし、フランス車だから国産車より劣るということはない。唯一劣るとすればそれはシートアレンジとかなんだろうけど、そんなに多彩なシートアレンジの重要性を感じていないしこれでいいっちゃいい。後部座席を倒せば身長170cmぎりぎりないうらいの自分が普通に寝れるだけの長さはあるしこれもまた不満がない。
なんだかんだいってもディーゼルは最高だ
とにかく遠くまで行きたい・・・そんな人には3008しかお勧めしない(きりっ
理由のひとつが黒子に徹するパワートレイン、このディーゼルエンジンと8速ATの組み合わせの良さにある。
アイドリングは確かに騒がしいものの走りだせばディーゼルであることをサウンドで知るシチュエーションはほとんどないくらいの遮音性の高さはあるし、それよりも圧倒的なトルクで運転が楽だ。8速もあるATなのでほぼ2000回転以下・・・常用回転域は1500前後というガソリン車では考えられないような回転数でバカみたいな高トルクを発揮する。何より荷物が満載だろうが、人が乗っていようが、トルクに余裕が有り余るのであまりアクセルの踏み込み量が変わらない。結果、多人数乗車でもそこまで燃費が悪化しづらいし、「重い!」と感じるような場面がほとんどない。
最近はダウンサイジングターボが主流だし、ディーゼルでもプジョーは2リッターではなく1.5リッターディーゼルターボが主流だ。だが、やはり排気量はトルクの余裕につながるし、1.5リッターディーゼルの308よりもずっと重いSUVの3008には2リッターがベストマッチだ。
純粋なライバルたる国産でいえばマツダCX-5もディーゼルはあるが、あちらは排気量が2.2リッターで税金的にも高くなるし、ATは6速。国産だとATの多段化よりもCVTに走りがちだがATはATの良さがあり、好みの問題はあるが8速ATは悪くない。
ATに関して言えば日本のアイシン製なので信頼性もある程度はあるし、悪評高いAL4の時代とは違い違和感を持たずに乗ることができると思う。パワートレインは黒子で言い、ディーゼルのトルクと軽油のコストの低さ、それらの相乗効果で3008はどこまでも走り続けられる1台となった。
どこまでも走り続けたいあなたへ
プジョー3008を乗り続けている自分が、どんな人ならお勧めしたいかと問われたらそれは間違いなく「ロングドライブが好きな人」というのがまず挙がる。そして、運転を楽しみたい人だ。
3008はスポーツカーではない、でもハンドリングは割とスポーティだ。ノーマルの乗り心地を生かしながらハンドリングをより高めたいならリジカラを入れるといい、3008は異次元のトラクションを持つハンドリングマシンへと姿を変える。
SUVはジャンル的には走りを楽しむのではなく、家族で楽しむアクティビティを成立させるための道具だ。運転の楽しさはセダンやステーションワゴンには絶対に劣る。とはいえ運転を楽しみたいという欲がわずかでもあるのであれば3008は必ずその期待に応えるだけのポテンシャルがあるし実際ワインディングではかなり楽しませてもらっている。
3008のディーゼルならワインディングの上りで86やロードスターあたりのスポーツカーに離されることなくついていけるし、もうちょっと上のクラスを相手にしても全然ついていける。SUVのくせに走りのポテンシャルが高い。だから好き。
シートが疲れないのもいい、フランス車は全般シートのできがいい。これこそが輸入車が国産車と大きく違うところでもあるが長距離をクルマで移動することが多いフランスならではのこだわりだ。このシートのおかげで会社帰りに九州までサウナしにいくなんてアホなことが椎間板ヘルニア持ちの自分でもできる(´;ω;`)b 同じ腰痛持ちの人はぜひ試してみてほしいなぁ・・・。
3008を買うのであれば?
もしこれから3008を買うのであれば絶対にパノラミックサンルーフは付けたほうがいい。これはもう3008のための装備と言っても過言ではないし、これがないと3008である意味が9割減だって思っているほどに自分は推したいオプション。
そもそもプジョーを買うならガラスルーフは必須。というよりフランス車なんだから天井はガラスor開くのはデフォでしょって思ってるくらい。安くはないけど、あとから付けられないし、後部座席に人を乗せる用事があるなら絶対に付けなければだめだ。
夏場が暑いとか、シェード閉めればなんら問題なし。そんな些末な問題よりも、パノラミックサンルーフの圧倒的な開放感から得られるもののほうが遥かに多い。サウナのあとにルーフとサイドガラスをおろせば追いととのいも体験できるし、車中泊のときに上がガラスなのもなんだかいい。
ガラスルーフは重いから運動性能がという人もいるけれど、そもそも3008にそこまで運動性能を求めるか?って気もするし、ガラスルーフでもワインディングでかなり楽しんでいるし、正直違いがわかる人のほうが少ないし走りのデメリットを感じる瞬間はほとんどないと思う。そんな残念な理由でガラスルーフを諦めないでほしい。
唯一のネガがあるとすれば「いつかは壊れる、雨漏りする」リスクと標準ルーフより室内天井高がわずかに低くなっていることくらいだ。どうせ大半の人は10年も20年も3008に乗らないだろうから、それならまずは1度パノラミックサンルーフをつけて圧倒的な解放感を楽しんでほしい。子供がいる家なら絶対に!絶対に付けなきゃだめ!むしろ日本国憲法で「プジョーに乗るならパノラミックサンルーフは必須」としてほしいくらいに。そのためだけの憲法改正を要求したいレベル。
3008に標準で付けるOPはこれくらいしかない。カーナビもあるが、今やCarplayもAndroidAutoもあるし正直それらで不便を感じたことは一度もない。TVが見られないとかあるかもしれないが、TVは見ないし必要ない。Apple側でCarplayでNetflixとか見られるようにしてくれたら更にいいが、それはプジョーの問題ではない。
不満点はあるのか?
正直ない。おわり。
これだと多分つまらないので強いて挙げるならアイドリングストップがいちいちONになり、その解除が物理スイッチではなくディスプレイからやらねばならないってとこ。センターディスプレイが極稀に死ぬのでそうなるとOFFにできないし、色々嫌。リフターなどはもう解除前提なのか物理スイッチでOFFにできるんだけど、ここだけはスイッチを独立させてほしかった。
いや、ほんと、それしか不満はない。
スペシャリストよりもジェネラリストを狙う
「スペシャリスト」と「ジェネラリスト」という言葉があるが、それで言えば3008はジェネラリストで間違いない。ある程度幅広くなんでも使うことができるが、その道のプロに敵うほどの能力は持ち合わせていない。だが、逆にそのジェネラリスト性が5万kmを乗っても飽きない要因なのかもしれない。スペシャリストはその分野には強いが、裏を返せば得意分野でしか使えないということでもある。ある程度なんにでも使えるSUVというジャンルはそこに価値を見いだせれば最高の相棒になる。
3008にしてから車中泊とキャンプの回数が増えた。それはもちろん新型コロナによる室内アクティビティが難しい状況が多少は影響しているとはいえだ。ただ今になって思えばこのWithコロナの状況において公共交通機関が使いづらく移動をクルマで行いたいという気持ちに対して3008はいい働きをしてくれている。
ジェネラリストであるからこそ、あらゆる場面で3008は大活躍する。在宅ワークがデフォになった今ではクルマの中でテーブルを広げて仕事だってするようになった。この適度な広さがあればこそだ。
広い車がいいならミニバンでもなんでも買えばいい。
けれどこの走りのよさはミニバンでは絶対に出せないものだ。これもジェネラリスト。スポーツカーほどスポーツはできないが、ミニバンやそのへんのSUVよりはいい走りをする。この適度なバランスが3008の持ち味だ。
まずはこのデザインに惚れることができたなら買って後悔はしないし、今だって後悔はしていない。それどころかこれからも末永く乗り続けたいと思う1台。
それが3008だ。