やっとこさ、NEW 3008に乗ることができた。
先代3008が好きだった身としては、この正常進化しているNEW 3008がとにかく期待の一台だった。乗る前からして、これが1年前に販売されていたら今の自分が乗っていたのはFIATではなくPEUGEOTだっただろうと断言できる。営業の塩対応とかは関係ない。Amazonだろうが楽天だろうが、どこだろうが売っている場所で値引きなんかゼロでも絶対買っただろう。まぁ車の購入というのは結婚と同じでタイミングが重要なので、NEW 3008ではなく500Xであることもまたタイミング。それに対しての後悔はない。
プレミアムフライデーとはいえ、15時に試乗に来るやつなんか早々いない。ましてや悪天候だ。ガラガラの店内はPEUGEOTのセールスではなく、CITROENのセールスが対応してくださった。メカにも詳しい方で、さすがは変態CITROENを売るだけのことはあり知識も豊富で話も面白い方で、去年この人と308SWに試乗していたらやばかった(何が)というくらいに好印象だ。
なんで同じ敷地でやっているのにPEUGEOTは塩対応でCITROENは神なのか、禿謎い。
NEW 3008の売れ行きは好調すぎて新型モデルなのに屋内に展示できるモデルがないそうだ。試乗車に卸す一台しかこの店舗にはなかった。
普通は新型車が出れば屋内展示と試乗車に1台ずつは用意する。
3月販売開始の新型車で初期台数が限られているとは言え展示車すら用意する余裕がないほど売れているというのは驚きだ。
なので土日になると試乗車が展示車代わりになるので、試乗できる時間が限られるそうだ。平日、しかも雨の今日のような日は狙い目だったようで運良く試乗車に有りつけた。
既にご存知のとおり、現時点でNEW3008の国内モデルにディーゼルはない。評判がいいPEUGEOTのディーゼルが新型に採用されないのは残念だが、夏くらいには導入されるのではないかとのことだ。
このディーラーでは売れる車の大半はディーゼルモデルらしい。ガソリンに比べ車体価格は高いのにそれでも売れるというところができの良さを示しているのかもしれない。ならば尚の事ディーゼル3008の早期導入を期待したい。
とはいえガソリンモデルで不満が出るのか?と言われればそうでもない。
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ニューモデル速報 インポート Vol.46 プジョー308のすべて
- 作者: 三栄書房
- 出版社/メーカー: 三栄書房
- 発売日: 2015/02/04
- メディア: Kindle版
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308シリーズのSUVモデルでもある3008ではあるが、ガソリンエンジンは308が1.2Lの3気筒であるのに対して3008では1.6Lの4気筒になる。別に3気筒を非難するわけじゃない。軽自動車と同じかよ!と言う時代でもなくBMWなど欧州車勢はダウンサイジングで3気筒を当たり前に使うようになった。
400万円を超えるセダンですら1.5Lの3気筒を使う時代だ。シリンダー数が減ればその分消費するガソリンの絶対量は減るし燃費という面では当然効く。パワーにしてもターボ化すれば今やこの程度の排気量でも300馬力は狙える時代だし、馬力絶対主義の時代でもないので正直いえばトランスミッションとの組み合わせ次第で130馬力、トルク220Nm程度でも十分パワフルに感じられる。何の不満もない。不満があるとするならばシリンダー数の多さこそが高級車だと信じている人たちを満足させられないくらいか?とにかく308のときは1.2Lの3気筒でもそれを不満に思うことは試乗レベルでは当然になかった。低排気量のデメリットがでるのは坂道や発進くらいで、巡航してしまえばそこが気になることはほぼない。
PEUGEOTの1.6Lはその昔から定評のあるエンジンだった。多分RCZなどと同型だろう。であれば最高出力は300馬力を狙えるものだし、トルクフルなエンジンだ。SUVに搭載するのは実に理にかなう選択で、ここで1.2Lを持ってこなかったのは正しい選択に思える。だからこそ、普通に走っていてもディーゼルでないことに対する不満はほぼほぼないだろう。
もし不満があるのであればRaceChipも既に出ている。
最大212馬力まであがるし、トルクも30kgmを超える。これで不満ということはないだろう。むしろFWDであることを考えればこれ以上の出力は乗りづらさに繋がる。ダウンサイジングでも1.6Lは割りと大きなほうだし、エンジンに余裕があるからカタログ数値は低くても最終的には1.4Lターボの500Xを超えられるポテンシャルはある。
給油口のガソリンの隣にある如何にも何か入りそうなやつはAdBlueの注入口だろうか?
走り出してみると308とは明らかに違う質感の高さに感動した。 ディーゼルではないといえ1.6Lのエンジンは非常にトルクフルだ。FWDとはいえ1460kgのカタログ重量は決して軽くはないが、不満はまったくない。クラスが違うので比べるのも変な話だが、せっかく500Xに乗っているのだからわざと比較してみよう。
先程FWDで1460kgと書いた。500XのAWDモデルと同じカタログ重量に重いと感じてしまうのは仕方ない。
Peugeot - NEW SUV PEUGEOT 3008
重量増加とハイコストを避けられるというコメントに思わず突っ込んでしまうほどだが、そこは500Xとそもそもサイズが違うという、そこに目を向けないとダメだ。セグメント的にはNEW 3008は500Xよりワンサイズ上になる。ティグアンや国産でいえばCX-5だ。
CX-5はFWDモデルで1600kg、AWDで1650kgだ。
NEW ティグアンはFWDしか国内には導入されていないがFWDモデルで1540kgだ。確かにそれらと比べるとNEW 3008は十分に軽い。
比較表のCX-5だけ間違えてAWDでやっちゃったてへぺろ。
治すの面倒だし、車重だけ1600kgだってところで。
直近に販売開始された事実上のライバル3台を比べてみるとセグメントを合わせているのでサイズ的には3車同列といったところだ。308のとき同様にライバルに比べて圧倒的に軽い車重で成立させている。そこに165馬力のエンジンなのだから別に何の不足もないだろう。軽い車体であればそこそこのパワーで十分に走る。ただ、排気量がガソリンで1.6Lというところで日本国内では自動車税で不利にはなる。ティグアンは1.4Lなのでその経済性をアピールできる。アピールしなくてもVWの時点で黙ってても売れるだろうけど。
電子式のATセレクタは最初使い方が不明だった。不思議な操作感だ。プリウスやアウトランダーなどのEV的なセレクタともまた違う独特な操作感。慣れてしまえば別に何てことはないのだろうけど、PがボタンなのはやっぱEVじゃないのに違和感がある。スポーツモードも搭載されており、308シリーズ同様にステアリングやスロットルレスポンス、そしてサウンドに変化が現れる。サウンドに関しては308よりはおとなしめだ。あの過激で人工的なサウンドは賛否あるだろう。3008というキャラを考えれば静かめで正解だろう。ただ、同じくキャラ的にスポーツモードに入れることもそうないだろうとは思った。それくらいに十分なパワーをノーマルモードでも叩き出す。
NEW 3008の何がいいって動的な質感も相当高いことで、サスペンションがちゃんとPEUGEOTしているところだ。308のときは「随分とドイツ車的になった」と感じたが、NEW 3008はフランス車の味付けだ。ボディ剛性は十分高く、硬さを感じるがサスペンションがよく動く。柔らかい足がしっかり路面をとらえかつ速度を上げても悪天候でもまったく横風に煽られるような不安感がない。猫足なんて営業トークでしか使ったことがないが、多分この3008の足が猫足って言うんだろうなぁと思った。500Xのの足も相当硬かったが、全高の高いモデルは足を固めて安定感を出すというのがある種のセオリーではあるが、3008のしっとりした足回りは好印象!
DSGだの8ATだの9ATだのトランスミッションの多段化や変わり種は面白くもあるが、オーソドックスな6速のトルコンATで十分!多段化は商品の魅力を上げるような気がしないでもないが、実際9ATの車に乗っているものとして使い切れない最後の1速などただの無駄としか思えないし、変に多段化されているせいでエンブレも効きづらいし、全然その恩恵を得られない。少なくとも日本国内では6速で十分だし、NEW3008もとてもスムーズに走ることができた。
アイドリングストップに関しても308では復帰時の振動が気になったが、さすがに車体が大きいことやプラットフォームも変わっているしエンジンマウントなども変わったのだろう。全然気にならないレベルで、いつエンジンが止まって復帰したのか、大げさな言い方をすればほとんど理解らないレベルだ。一瞬「もしかしてアイドリングストップしてない?」とか思うほどの静かさは見事としか言えない。
走りの質感は先代3008から較べてもだいぶ進化しているが、これはもう好みだと思う。ドイツ車的な乗り味が好きならばそれはもうティグアンをおすすめしたいが、この3008は今までPEUGEOTを疎遠していた層にも受け入れられるんじゃないかというくらいの出来栄えだ。良くも悪くもすべてに置いてプレミアムなSUVとして商品力が高い。
350万円から、実質的な売れ筋は400万円からとはいえ、このクラスの輸入車では安い方だ。そしてこの価格帯で既にフルデジタルのメータがついてくるのは凄い。見やすいかどうかは別だし、何種類もの切り替えが必要か?と言われると微妙だ。自分が使うとして多分写真にあるオーソドックスな速度と回転計の二種類が表示されたものになるだろう。それでも目新しさはある。
[画像] 写真で見るプジョー「3008」(49/92) - Car Watch
3008といえばトグルスイッチだ。先代モデルはトグルスイッチが洒落ていた。ただ、先代の唯一の欠点はトグルスイッチという売りがありながら、普段使う機能はほとんどそこに盛り込まれず使う機能といえばハザードが一番多かったという人も多いのではないか?というくらいにせっかくあるのに触らないスイッチだった。
NEW 3008はセンターの大型スクリーンに映し出すメニューの切り替えスイッチを担う。エアコンやナビ、設定などをトグルスイッチを使ってワンタッチで切り替える。なので嫌でも触らなきゃいけないスイッチになったところは好印象。なによりスクリーンの表示をここで変えられるのはわかりやすくていい。
308まではメニューの切り替えも液晶部分にあった。どちらが使い勝手がいいかって話だが、3008の場合は先代からトグルスイッチを引き継いでいるのでそこに切り替えを割り当て液晶部分は液晶だけとシンプルな構成にしているのでこれはこれで有りだ。
先代3008はいくつかのネタ話がある。良い意味ではなくネガな意味でだwそのひとつがセンターコンソールボックスの蓋の開き方だ。左ハンドルのものを右ハンドルにしているせいで蓋の開く位置が日本向けだと運転席側にヒンジがついており、かつこの蓋が妙にでかい(いいかればボックスの容量が大きいのだが)せいで蓋を乗り越えて中身を出すのがかなりしんどい。ヒンジの位置くらい右ハンドル仕様で作ればいいのに!と思ったが、PEUGEOTとしても3008は初物だったし、異国の地でどれだけ売れるか理解らないものにコストは掛けたくなかったのだろう。
同様のネタで言えばインパネの小物入れだ。微妙なサイズで使い勝手はあまりよくない。本国仕様はここにナビが付いた気がする。当時の輸入車あるあるだ。無理やり小物入れに仕立てるが、何を置けばいいのかは説明に困る。なのでここをちゃんと液晶にしてきたNEW3008は最高だ。
コンソールボックスで言えばNEW3008は観音開きになっている。
ドリンクホルダの後ろにあるこれが左右に開く感じだ。容量も十分だし、先代の使えるのにあえて使わない不便さは皆無だ。インテリアついでに言えばドリンクホルダが2つちゃんとあるのもいい。フランス車だからという理由でドリンクホルダを諦めることはもうない。先代も2つあったが、後期型からなのか、グリップコントロールがドリンクホルダの位置に入るという謎の改良をしている。
いやいやいや…駄目だろこれwちなみに豆知識レベルだが、電動サイドブレーキがPEUGEOTで初めて採用されたのは先代3008だった。そういうところでも野心的なモデルではあった。
インテリアの質感はかなり高い。ドアにも布っぽい生地が貼られ、見た目と触れた感じがかなりいい。イタリア車とは別のお洒落具合だ。
パノラミックルーフは開くようになった。このガラス面積でかつ外気を取り入れられるというのはかなりエロい。パノラミックルーフが開くといいよね!という意見は確かにあった。けれど「このガラス面積を確保するには仕方ないです、それにそんなに開けないでしょ?」と営業は多少なり言ったはずだ。それを全て撤回することを3008ではやった。やはり外気が入ったほうが気持ちはいい。ただし、前席にはほとんどメリットがない。
前席のメリットなんざしったことじゃない。PEUGEOTはすべて後部座席のおもてなしだ。前席はストレートに走りを楽しむところであり、後部座席はとにかく快適に、そして空を眺める特等席だ。この車の後部座席で男性は女性と並んで星でも見たらいい、最高のデートになる。そのエロさがPEUGEOTの魅力だ。なのでPEUGEOTを買うならパノラミックルーフがないといけない。
安全面に関しても抜かりはない。必要なものは全て搭載される。アクティブクルーズコントロールも40km/h以上なら作動するし、バイパスで試してみたがアウトランダーPHEVではじめて試したときと変わらない頭のよさをみせた。イタフラのこの手の装備は信用しすぎると怖いのでブレーキに足はいつでも載せられる体勢は維持したが、高速道路などでは間違いなく強い武器になる。
全体を通してNEW3008は優れたSUVだった。それだけ書くと微妙な感じに聞こえるが、先代の3008はお世辞に大ヒットしたモデルではなかった。悪くはないが、国内モデルはあからさまに売れることを前提とした作りになっていない。だが、時流としてはSUVがバカ売れするこの時代にPEUGEOTとしても日本市場は無視できないし、本気で一度プレミアムなSUVとは何なのか?を考え抜いた末の一台がこれなのではと思う。だからこそいたるところに本気を見れる。
先代を知っている人からすれば正常進化だが、知らない人にもこのエクステリア・インテリアは受け入れられるだろう。先代のよさをそのままにブラッシュアップしてきている。今までフランス車は好きモノが選ぶというのが定石だったが、NEW3008に関して言えば誰でも抵抗なくPEUGEOTに入門できると思う。確かに知名度などではBMWやVWを買うのがいい。けれど、お洒落なフランス車の世界も一度は知ってみてほしいなぁとは正直思う。その入門として不満のでないプレミアムなSUVは最適だ。これでよいと思えばもう大丈夫、フランス車の世界へようこそで最終的にはCITROENあたりに行き着くだろう。事前予約が殺到したそうだが、これが売れない理由はもう理解らない。絶対売れるだろう。売れる車が面白くないとはぼくは思うが、これだけは売れる理由がわかるし、これからSUVに行く人が価格面を除きなぜ3008を買わないのかという理由をぼくは知りたい。それほどに完成度が高い車だった。
ディーゼルの登場に期待したい。