1月7日の事故を受け、代車としてやってきたレンタカーのMito。
BRUTALEと並べるとなかなかよい絵面になる。
知らない人から見ればアルファロメオとMVアグスタの組み合わせは実にエレガントで贅沢なものだろうけど、知る人が見ればただの苦労人だ。
そんなMitoさん、いよいよ500Xの修理が終わったので返却となる。
久々のクーペスタイルだった。最後に乗ったクーペはFTOで、あのときはマフラーを外して6A12MIVECエンジンが奏でるサウンドを擬似アルファロメオサウンドなどと呼んだものだけど、あれから十年近く経ってひょんなことで本物のアルファロメオに乗ろうとは…
代車生活1ヶ月弱、9356kmでやってきたMitoさんを返却したときは確か11300km手前だったかと思う。ざっくり1900kmくらい乗った。レンタカーということもあるがおとなしめの距離数だけど、そもそも子供を乗せるに不便すぎて家から家の拠点間移動とたまのデートにつかうのがメインだったので距離が伸びるはずがない。
距離も然ることながらMitoという車と過ごしてみて、何を感じたか、備忘録的に残しておこうと思う。何しろ最近記憶が危ういことがあって、前日の夕飯を思い出せないどころか、夢遊病的に謎のメモを携帯に残していたりする。明らかにX-FILEのみすぎで宇宙人に頭をやられているのだけどそれはまた別なお話だ。
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この1ヶ月をMitoのあった生活と題して振り返ろうと思う。
所詮はぽんこつなおっさんの書く戯言なので信じるも信じないも読みて次第だ。
そう、X-FILEのように。
■Mitoのある生活
日本の水戸市で生産されているイタリアと日本車のコラボモデルで、今でいうところの124スパイダーみたいなものだ。車台はスズキのスイフトのものを流用している…嘘だから信じないように!
げふんげふんと咳払いしたところで書いてみると、Bセグメントに属するこの車はFIATのグランデプントとプラットフォームを共有しているらしい。
内装をみてもメータ周りにグランデプントの香りをほのかに感じる。
何が書きたいかと言えば、先日MCしたが
基本設計は2005年…2000年初頭に設計された車であるということだ。
運転していてところどころに不便さを感じるがそれも致し方ない。Mito自体の発表は2008年だそうだが、9年もFMCされずに生き残っているシーラカンスみたいな車だ。FIATの車はとにかく息が長いのが特徴な気がするのでアルファロメオにしたって9年?20年はFMCなんかしないよって気なのかもしれないが、とにかく最新モデルの500Xに乗るオーナーがMitoに乗り換えればとんでもなく古臭い車に思えてしまうのは仕方ないことだった。
今時逆に珍しいバタフライキーにしても、
モンスターエナジーが入らないドリンクホルダにしても、
レトロな感じがする液晶にしても、そう2000年初頭の車であると思えば「致し方ない」という評価になる。今のMitoは焼き直しでオートライトとかその辺の装備はついているようだけど基本設計が古い以上は仕方ない。でもそれはそれで味として受け止められるのがイタ車ファンだろう。新しいイタリア車はイタリア車らしくないと見る向きもあるし、そこは何を求めるか?なのだと思う。
Bセグメントに属する車なのでとにかく小さい。
日本で言うところのヴィッツやデミオ、フィットのカテゴリになる。
全幅1685mmのグランデプントに対し1720mmと3ナンバーにはなっているがそれでも今の基準で考えれば十分コンパクトな部類だ。ざっくり比較表を書いてみた。
さすがにジャパニーズなコンパクトカーに比べると大きめではあるけれど、それでもまぁ今時の車にしては小さい。しかもMitoは欧州車カテゴリに属しているのでそういう目で見るとかなりコンパクトな車だ。実際、都内の移動に使うにはこのサイズはストレスが少ない。最小半径回転が5.5mと小回りが微妙なところはあるが、狭い路地や切り返しなどでも問題は一切なかった。
唯一の不便はチャイルドシートだ。さすがに子供を頻繁に乗せるような人が買う車じゃない。もちろん乗せられないことはないし、助手席にチャイルドシートを載せれば後部座席に乗せるよりは楽ができる。しかし、いかんせんのクーペだ。
重く長いドアは狭い駐車場で子供を抱えて開けるには難儀する。2月に入り風が強い日が増えた。そんなとき、Mitoのドアは恐怖でしかない。子供には問題なかったが、後部座席から降りようとした大人が、風で閉じようとしてきたドア、その窓ガラスの角が顔に刺さって悲鳴を上げたこともあった。ドアノッチ?が微妙で、中途半端なところで停止するので扱いづらいは扱いづらかった。みたからにそういう車ではないが、子供を乗せたり、大人が四人で移動するようなことが頻繁にあるならMitoはオススメできないし、多分そういう人は買わない。
逆を言えばカップルズカーとしてや、女性がひとりで乗るには最高の車だ。インテリアは地味ではあるが、質素ではない。エクステリアもインテリアも大人の女性が好きそうな落ち着いたもので、最初に書いたグランデプントベースだから古臭い的なぼくの感想もその視点で見ると落ち着いた車であると言い換えられる。
そんなわけで、子供がいる我が家ではMitoという車は実に合っていない車であり、そもそも買うこともないだろうジャンルであるのは間違いない。それを1ヶ月もよく使えたものだと自分でもぐっじょぶ!と言いたい。
■動力性能、足るを知ることの重要性。
Mitoに乗っていて思ったのは非常にアンダーパワーな車であるということだ。
先の比較表でみてみれば、国産の同セグメントで見ればダントツのパワーではある。
ただスポーツモデルまでヴィッツは1000kg弱に109馬力のRSがあったし、スイフトスポーツは1050kgに136馬力の自然吸気エンジンだった。1.4Lターボで135馬力というのは車重1260kgという重量を考えると物足りない。当然トルクはターボ故にこの車格に2.4L自然吸気並の性能だから加速はよいがトップエンドの伸びでは高速道路でカローラにすら煽られるレベルでとにかくアンダーパワーであると感じることが多くあった。
それは500Xを知っているからというのも多分に影響している。
エンジンは同じである500Xは170馬力以上をカタログ値で書かれている。さらにぼくの500XはRaceChipまで搭載しているからノーマルのMitoとの差は歴然だ。いくら車重が重いとは言え、フルノーマルのMitoに比べると500Xは爆発的な加速力で、かつとても静かに免許が危うくなる速度まで引っ張ってくれる。
そう、Mitoでの高速で感じたことにうるさいというのもあった。
何度も書くが基本設計が2000年初頭の車だ、それでも遮音性に関しては頑張っているほうだろうがサッシュレスのドアだったり、車体の作りからして今時の車とは大きく違う。またキャラクタがスポーツをイメージしているところもあるのか、とにかく排気音を車内に入れようということかとにかく1.4Lマルチエアターボのサウンドは車内によく響く。言い換えれば車内は賑やかということになる。
高速巡航では100km/hで3000rpmと6速なので結構回る。どうしたって振動や音は500Xの9ATで比較すれば分が悪く、不快に思ってしまう。
同時に燃費も悪くなる。
Mitoの高速燃費を叩き出すなら高速巡航は80km/hくらいで走行車線を淡々と流すのがいい。そうすれば燃費は意外によくなるものだ。
500Xよりも空力的には有利だし、マルチエアの制御も3000rpm以下で巡航すれば効率がよくなるのか驚きの燃費が出る。とはいえ2000年初頭のイタリア車の燃費計をどこまで信用するか?という疑問はあるので話半分程度に思っておくのがいい。ただ、そこまで燃費は悪くなかった、というのは事実として書いておこう。
ぼくはMitoでは高速走行はあまりやりたいとは思えなかった。それは500Xが高速道路でひたすらに遠くまで行きたいと感じた車であるのと真逆の感想だけれどそりゃそうだろう、Bセグメントの車、ヴィッツやフィットで長距離を移動したいと思う人はいない。当然ながらできるけど、それが得意か?と言われればもっと快適に移動できる車はあるし、それはやはり用途が違うだけの話。
Mitoは街乗りやワインディングで楽しい車だろう。
アルファTCTはVWのDSGと比べれば基本設計の古さもあって制御系に不満は残るが、これ単体で見れば少なくともZF社の9HP(9ATの名称)よりも遥かにいい。FPTが開発したこのトランスミッションをなぜ500Xもクロスプラスに採用しなかったのだと心底呪いたい気持ちになる。FWDモデルに搭載できないとか、そのへんの事情があったのかもしれないが
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最大トルクは350Nmまで対応している高トルク対応型の乾式クラッチDCTなのでAWDに対応していれば500Xでもクロスプラスの性能には十分対応できる。おそらくだが500XがABARTH化されて出てくることがあればそのときはFPTが開発したこのアルファTCTが採用されるのではないかと思っている。ちなみにこのTCTが500XのFWDモデルに採用されるDCTと同型なのかは理解らない。特に興味もないので調べようとも思わない。
ただ言えることはアルファTCTは面白かった。
たまにぎくしゃくすることはあっても、全体的には扱いやすく、9HPに比べたら積極的にエンジンブレーキが使えていたので相対的にブレーキを踏む時間は短くなる。500Xの9HPはぜんぜんエンブレが効かないのでブレーキに頼ることが多くなるのでやたらブレーキを踏む下手なやつにみられてしまうかもしれない。別にみられたってどうってことはないけれど、ブレーキパッドが減りやすくなることも考えればやはり積極的にエンジンブレーキが使えるトランスミッションはいい。最初は反応が鈍いと思ったTCTだが、500Xに乗り換えてみると実は凄いレスポンスがいいトランスミッションだということもわかった。
シフトダウンで車内に飛び込んでくる排気音は非常にスポーティだが、エクステリアの可愛らしさとのギャップが大きく、デートカーとして使ったとき、特に自動車に興味がない女性からは「凄い音するねこの車…」と驚かれる。逆にスポーツカーで若い頃にデートをしていたような妙齢の女性を乗せると当時の話題で盛り上がれる。ちなみに後部座席に人を乗せると排気音がとにかくうるさく耳障りらしい。これも何度も書くが同じエンジンながら500Xはここまで車内に音を入れてことないのでそのへんもキャラが違うのだろう。エクステリアは可愛いがスポーツカーということだろう。
デュアルクラッチ・トランスミッションにこれだけ長い期間乗るのは初めてだったが、これはこれで非常にいい。トルコンATにはトルコンのよさ、トルク増幅器として低速での扱いやすさがあるが、DCTにはDCTのスポーティさなどよさがある。自動車は面白い。
アンダーパワーだと感じるならMitoにはそれなりにチューニングパーツが存在しているのでチューニングすればいい。息の長いモデル故にユーザが思い思いにいじることができる。パーツが多いのは元々パーツが国産車より少ない輸入車にとっては大きなことだけどMitoにはいじる楽しさが残されている。国産車的な楽しみ方をお求めやすい価格のイタリア車で実現できる、これがMitoのよさだと思う。
実際のところ、コンパクトなスポーツカーとしては十分な性能はあるし、ABARTH系の過激なものとはキャラが違うのだと理解した上で足るを知るというところでMitoは十分な性能だった。
ハンドリングもなかなかのものでDNAをダイナミックモードに切り替えるとかなり楽しい。国産のコンパクトハッチはどちらかといえば全高の高い実用車ベースだが、Mitoは1465mmと低い全高なので足回りがそこまで固められていなくてもロールは少ない。ダイナミックダンパーとかそんな小細工をしなくてもロープロポーションであれば十分だ。国産のライバルと比べて重い重量はきっと補強に回されているし、高速走行は苦手とは思いつつもそこそこのペースで攻めても破綻を感じさせない安定感はさすがの欧州車だ。どんなスポーツでもきっとそうなのだろうけど、日本でどんなに優秀な選手でも海外に出れば最初は苦労するし、それはもう基本骨格の違いや生活スタイルの違いだったり本場のそれに達するには相当の苦労が必要というわけで、日本車がどんなに欧州車に近いと言っても無駄と削られるそのコストの部分だったり日本では不要とされる性能が本場の欧州車にはある。軽さは武器だが、重いことには重いことのよさもまたあるのかもしれない。
■総括:Mitoに乗る生活
Mitoを返却する前日に2回めのゾロ目を迎えた。
ひとことでこの車を総括するなら最高の贅沢品。そもそもアルファロメオのブランド自体が贅沢ブランドな気もするけれどクーペというスタイルが如何に贅沢なものであるかと改めて考えさせられた。人も荷物も載せられず、狭い駐車場では乗り降りにすら難儀する。
デザイン重視なクーペスタイルは日常における最高の贅沢だ。選ばないのではなくこれを選べる環境が今の自分にはない。何台も車が持てて、そのうちに一台、日常使いする車がMitoというのであればそういう贅沢をしてみたいとは思う。そういうことができる環境にある人が積極的に選ぶような車だと感じる。装備を考えても、車格を考えても、日常を快適に過ごすのであれば明らかにスイフトを買ったほうが幸せになれるが、Mitoを手にすればスイフトでは得られない優越感が得られるだろう。そういうもののために人は輸入車に高いお金を払うことを無駄と思わないのだ。信頼性、快適性、金額それらを踏まえれば絶対に輸入車なんか選ぶ必要はないのだから…
色々と不満もあったけど、絶対に自分が選ばない道をMitoは示してくれたし、デートカーとしてもなにげに人気で1ヶ月という短期間でMitoを使って何人もの女性とドライブに行った。それはアルファのブランド力もあるけれどMitoが女性受けした証拠かもしれない。それはまず間違いないことで、500Xに乗っていても、Mitoに乗っていてもぼくの容姿がぼく自身から綾野剛になることは絶対にないので車のブランド力様様である。
Mitoを自分で買うことはまずないにせよ今後出るステルヴィオは気になるところで、そのときにはアルファロメオのSUVを買えるような身分でありたいなと切に願わずにはいられない。そういう人生の目標を与えてくれるのも高貴なるブランド・アルファロメオの凄いところだろう。
ありがとう、Mito!