普段あんま映画は観ないのだけど、毎月1日は1100円で見れると言うので話題のシン・ゴジラを観てきました。
正直申し上げて、ぼくはゴジラ映画が好きじゃない。初代はともかく怪獣VS怪獣になったゴジラとか非現実すぎて好きじゃなく、そもそもぼくが見る映画ってドキュメンタリーとか戦争系とかそういう”現実に起きるかもしれない”や”現実に起きたこと”を書いたものが多いので、こういう娯楽映画を見ることがめったにない。
信長以来だね、映画。
本当は『貞子vs伽倻子』の方が見たかったんだけどねぇ…
怪獣vs怪獣は嫌いなのに、呪vs呪は好きなのか、お前ってツッコミは無しで。
ま、子供の頃からウルトラマンとか大嫌いだった人なので巨大なものが街で暴れる系がすきじゃないのかもしれない。そもそもウルトラマンとか、お前がジャンプしたらそれだけで街壊れんじゃん?と何度思ったことか…
嫁さんは大のゴジラ好きで、家で散々DVDとかビデオを見せられてきた。それだけの為にビデオデッキを残しているくらいに彼女はゴジラが好きだ、ゴッドディラーとか言い出しそうなくらいにゴジラが好きらしい、実家には巨大なフィギュアもある。ゴジラにも種類があるらしく、ゴジラを見るだけで何年式とか分かるらしい。すげーな!ゴジラにも年式あるんか…今回のゴジラ2016モデルは彼女に言わせれば「一番気持ち悪い」ゴジラらしい。
そんなゴジラ、なんで見に行ったかって単純に嫁さんの興味に付き合っただけなんだけど、先に観に行っていた友達に、
「これ怪獣映画じゃないから、災害パニック映画だから」
そんなことを言われて「??」と頭にはてながいくつか浮かんだのでまぁ1100円だしいいかーという感じで仕事あがりに新宿まで足を運んできました。
多少のネタバレは含まれるので、以下は新鮮な気持ちで見るためにも未見の人は読まないほうが楽しめるはずです。
ゴジラに興味がなくてもシン・ゴジラはかの庵野秀明氏が総監督を務めていることで公開前からさんざん話題になってました。ぼくら世代にとっての庵野氏は良くも悪くもエヴァで知らない人はいないでしょう。
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そこだけは今回のゴジラにぼくが求めていたところであり、じゃなきゃ多分見に行かなかった。だってゴジラとか毎回ビデオで見ても最後まで起きて見れたことないもん…途中で何度か見なくなって、某アレみたいに
毎年TVでやってるけどEDを知らない的な感じで5回くらいビデオを流されてやっと全体の流れを知るというのがぼくのゴジラでした、だから映画なんか行ったところで絶対途中で寝る自信があった(きりっ
でもね、もうね、このゴジラさ…やばいんだよ、いろいろと。
もうしょっぱなからヤバイ。
「え、誰だよお前?」
みたいなキモかわいい系の生き物がいきなり出てきて「あ、これモスラ的なやつか?」と思ってみたり、結局のところ庵野監督とはいえ2016もVSシリーズとかそういう感じか?と思っていたらそうじゃない、そうじゃなかったこれ!!
一度海に帰って再び帰ってきたときから「あ、これゴジラだ」になったけど、予告で全く出てこないあのキモカワ系には正直ビビった。
そして、自分たちが知っている系のゴジラが出てからの絶望、絶望、絶望のオンパ。
自衛隊の持つ武器はなんにも通用しません的な、それどころかせいぜい蚊が刺した程度の感じ?30mmもヘルファイアもゴミかよ!!(´;ω;`)ブワッと思っちゃうくらい、笑うくらいに通用してない。対戦車のヘルファイアが効かない生物って時点で多分自分が自衛官なら絶望するし、元戦車乗りの友人もそこは同調してた。戦車より硬い生きものて…
多摩川最終防衛ラインで自衛隊vsゴジラをやっていたけれど、その場所が自分の上司の家の真横で妙な絶望感があったり…丸子橋が吹き飛んだときに「ああああああボスの家がああああああああ」と頬を伝う一筋の液体(´;ω;`)ブワッ
破壊自体は絶望じゃない、だってそこは怪獣映画ですから?街を壊されている様子を見て、都心で働く社畜のみなさんは
「ゴジラよ、うちの会社も壊してくれ」
と心の底から願い、ほくそ笑んでいるはず。
某エースコンバットの東京ステージでアパッチを使って会社を爆撃していたのはぼくですが、なんでか知らないけどゲームとかで街を破壊するのってストレス発散になって愉しい。怪獣映画に醍醐味があるとすれば、実在の街を人知を超えた力が破壊する爽快感があるからじゃないですかね。
こういうゲームも怪獣と戦うより、設備を破壊するほうが楽しいよね、絶対。
なのでいつやるんだよ?と待ち望んでいた放射熱線を吐くシーンはみなさんお待ちかね!やっとゴジラだわぁこれ…になったと思うし、「おお、東京破壊しちゃえよ」とぼくも見ていて思った。
思ったけど、ここで最大の絶望を植え付けられた。
熱線で街を破壊するゴジラ、次第に見ている方は
「もうやめてクレメンス…やめてクレメンス…」
「もうやめて、東京都心のライフはゼロよ!」
と誰もが思ったに違いない。破壊力がどうとかじゃない、あかんこれ以上やられたら復旧とかそういう次元じゃなくなる、リアルに東京が死ぬ。と思ってあまりの絶望感に最初は口角をあげて「ははっ…」って感じになり、最後の方はなぜか泣いていた。感動じゃなくって絶望で泣ける映画はぼくの人生では初でした。
とにかく絶望も多かったけど、そればかりじゃなくちゃんと政府が頑張った!がこのゴジラなんでしょう。怪獣VS怪獣ではなく日本政府VSゴジラ。自衛隊でもなく戦うのはあくまで日本政府、政府があるから自衛隊はちゃんと機能して、作戦の下でゴジラと戦う、あくまで駒。独断専行、誰も勝手なことはしないし、ちゃんと命令に従うし、駆除対象とされた人知を超えた脅威が目の前にいてもたった二人の老人の為に殺すのを躊躇うほどに日本人。総理大臣の許可がなければ街が破壊されてもゴジラを叩けないのが組織。そういうリアルなお役所仕事がいい。
これはあくまで日本の映画で主役は日本人。米軍だったら巨大な怪獣が出た時点でいきなり米軍無双だろうし、F-15とかスクランブルかけそうだし、恋人と家族と愛国心を守るために戦い、当然ベッドシーンもあり、銃火器無双と核でゴジラをなんとかしちゃうし、家族がいれば最後に娘と抱き合うパパの絵で終わるはず。
でもこのゴジラはそうじゃない。あくまで日本に現れた災害のひとつであるゴジラをどうにかするためには法案を作り、自衛隊が勝手に無双することもなく、現代兵器はあまりに無力で、そもそも核が通用するのかこいつ?というような怪しさと無敵さと絶望さがある相手に対して「徹夜作業、増えるカップ麺のゴミ、コピー機に書類に捺印」で挑む日本人が描かれる。そうだよ、こうじゃなくっちゃいけないよ日本人は!
この手の映画あるあるで誰かが犠牲になって仕留めるとかそんな描写は少しもなく、死ぬ人は呆気無く死ぬし、家族愛なんかもない。逃げ遅れた家族が明確な描写はないにせよマンションの倒壊で多分死んだし、他にも大勢死んでいるような間接的な死はあれどそれをお涙頂戴には使わない。無慈悲に人は死んでいくし、ラブロマンスもなく、ただ絶望的な脅威にどうにかして立ち向かおうとする人たちが書かれるだけ。
そういう潔さに惚れた。
結末はどうあれ、結局ああするしか方法ないよなぁ…何したって通用しなさそうだしという感じ、この何をしても倒せない感の絶望は最近自分の中でマイブームなのかもしれない、かの『貞子vs伽倻子』も結局人間のやった対処法は倒さなきゃいけない奴をあかん状態にするだけでしかなかった的な?
そういうわけで結局、ゴジラVSであったような怪獣同士を戦わせて共倒れさせようとか、新兵器を使おうとか、オキシジェンデストロイヤーとかそんなご都合主義なものはあんま出てこない。あくまで生物としてゴジラを見た場合に考えうる理想的な手段を使うだけで、それを使うクライマックスは胸熱だった。男のコのロマンである重機が大活躍!戦車よりも戦闘機よりもホイールローダーとポンプ車が強い世界。
そして…
無 人 在 来 線 爆 弾 。
直前に無人新幹線爆弾が出てきていたにも関わらず、その印象を一瞬で消し去ったこのゴロの良さそして宇宙戦争マーチに乗って向かってくる在来線w
宇宙大戦争マーチ Battle in Outer Space
これに燃えない男はいない(きりっ
都内に電車通勤している人は映画を見たあとの通勤で山手線か京浜東北線に乗った瞬間に宇宙大戦争マーチが頭に流れたはずだ、上野から東京方面に向かっていたら尚の事最高だ。ぼくは映画を見た翌日にヨドバシに居た。
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Nゲージとゴジラのフィギュアは必須アイテムとなるだろう。
シン・ゴジラのあとにカトーの株を買った奴は大正解だ(何
とにかくあの新幹線と在来線がシリアスさを程よくかき消した。とはいえ、あの絶望的な状況下で線路も使えないし電車を残しておく必要もないとなればJR東日本は日本を、世界を救うために喜んで電車を提供しただろう。
今までのゴジラでは新幹線も電車もただ破壊されるだけのおもちゃでしかなかった。
東海道線も東海道新幹線も、ただゴジラの手の中で絶命するただのおもちゃ。
日本人が誇る技術の結集は怪獣の前ではただのおもちゃなのだ…と絶望する中で、その絶望してきた0系新幹線だったりの弔い合戦的にN700系がご先祖様の敵!!と言わんばかりに働く。そして在来線が。これはもう胸が熱い。
そんな映画はいくつかの謎を残して終わる。残された謎は見た人が勝手に解釈してねって感じかもしれない。
とにかく二時間を寝ずに、それどころか興奮の中で見終えることができた。
初代ゴジラを意識しながら、ほどよくすべてをリセットして2016年から再スタートをきる新しいゴジラとして多分これは理想の構成だったんだと思いましたね。最初に出てきたキモカワ系もそういう意味では「ぼくらの知っているゴジラ」の姿をぶち壊し、これが新しいゴジラだと言うにはふさわしい絵だったのかもしれないね。
ゴジラ自体は社会風刺的なところが初代やいくつかの作品にはあるそうで、初代が水爆だったり放射能を皮肉っていたとう話でこのシンは皆が言うようにまぎれもなくかの東日本大震災時の政府を皮肉っている内容でもある。
絶望しすぎて涙が出たのは、この東日本大震災を経験した人間だからなんだろうね。劇中でもあの震災を連想させる絵はいくつもあったし、そもそもゴジラという人間がどうすることもできない圧倒的な力は原子力発電所そのもので、制御しきれない放射熱線は福一の建屋が吹き飛び、メルトダウンしたあのときをまんま思い出す。
自衛隊が水組んで建屋にぶちまけるあの光景は当時からしても「いや、無理だろそれ…」と自分は呆然とTVで見ていたけれど現場の人間は多分そんなことを思っていなかっただろうし、思っていてもあのときはあれが最善だと誰かが命令して現場はそれを的確に遂行しただけだと映画を見ていて思う、ゴジラに対して何をやってもダメだけど、とにかくやるしかないんだよ!って意味ではみんな死ぬ気でやってんだと。
初代ゴジラにしてみてもゴジラに街が蹂躙される姿は第二次大戦を経験した人たちからすれば空襲で焼け野原にでもされた街を思い出し、圧倒的な力の前に敗北した日本人…でもどうにかしてやるんだ!という思いで共感できたかもしれないけれど、このシンの場合は東日本を経験した人が見ればあの絶望を思い出してしまうから圧倒的な絶望感を抱くんじゃないかと思います。
とにかく久々に心のそこから面白い!と思える映画が、まさか自分が苦手なゴジラシリーズだとは思ってもいなかった…ジャニーズやAKBを使わずにこんな映画を仕上げることができる邦画もまだまだやれるんじゃないかと思いましたね。
また来週にでも見に行きますが、これは多分二回か三回は見たくなる…そんな映画でした。
ゴジラ、恐ろしい子!